新潟知事選勝利でも安倍政権の前途は多難だ 「総裁3選」までは、なおも高いハードルがある

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新潟県知事選では与党が支持する花角英世氏(手前右から2人目)が当選を決めた(写真:共同)

史上初の米朝首脳会談に世界の注目が集まる中、10日投開票された新潟県知事選での与党支持候補の勝利に、安倍晋三首相ら政府与党首脳は安堵の表情を隠せない。「負ければ政権を痛撃し、会期末の与野党攻防も混乱必至」(自民幹部)とみられていたからだ。自民党執行部が国会乗り切りへの自信を強める一方、首相サイドは「これで一つハードルを越えた」(側近)と笑顔を見せ、9月の総裁選に向けた首相の"3選ムード"も加速するとの見方が党内に広がる。

ただ、森友・加計学園問題は依然、真相解明にはほど遠く、カジノ関連法案など与野党対決法案をめぐる攻防もこれからが本番だ。加えて、12日の米朝シンガポール会談の結果次第では、首相の対北朝鮮外交も厳しく問われかねない。このため、首相にとって「総裁3選」というゴールまでは、なお高いハードルが続く。

事実上の与野党一騎打ちの大接戦となった新潟県知事選は10日投開票された。自民、公明が支持する無所属新人で前海上保安庁次長の花角英世氏(60)が、立憲民主、国民民主、共産、自由、社民の5党が推薦する無所属新人で前県議の池田千賀子氏(57)と同じく無所属新人で同県五泉市議の安中聡氏(40)の2人を破り、初当選した。女性問題による米山隆一前知事の突然の辞職に伴う知事選だったが、元同県副知事でキャリア官僚出身の花角氏が池田氏に競り勝った。

知事選は原発隠しの「地上戦」で薄氷の勝利

与党が全面支援した花角氏は、政党色を薄めるため「県民党」を掲げ、地元の柏崎刈羽原発の再稼働にも慎重姿勢を示すことで原発問題の争点化を避けた。自公両党は地元の経済界や創価学会など支持母体の組織固めを徹底した。これに対し、立憲民主党など野党5党の統一候補として戦った池田氏には、枝野幸男立憲民主党代表ら5野党の党首や幹部が連日新潟入りして街頭演説や集会で安倍政権打倒を旗印に「新潟から政治を変える」と声を枯らした。

このため、知事選はそれぞれが地道な「地上戦」と派手な「空中戦」でしのぎを削る形となったが、組織力で優位に立つ与党が野党の猛追を振り切った。ただ、投票率は58.25%で前回(53.05%)を5ポイント強上回り、花角氏と池田氏の票差はわずか3万7000票余り。野党側が「原発廃止を訴えて出馬した安中氏の票を池田氏に上乗せすれば花角氏を上回っている」(地元選対)というように、与党にとっても「薄氷の勝利」となった。

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