「九州パンケーキ」はなぜ全国に浸透したのか 地元資源の掛け算で地域ブランドを構築

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第1回地場もん国民大賞、九州未来アワード、料理マスターブランドなど、数々の賞に輝いている(写真:九州パンケーキ)

ローカルブランドの戦国時代――。そう言っても過言ではないくらい、各都道府県では地元のPRに力を入れています。しのぎを削り合う中で埋もれてしまっている街も多い中、ローカルから視点を上げ、リージョナル(地方)を俯瞰で捉えることで新しいポテンシャルを掘り起こしているのが「九州パンケーキ」です。現在、九州に8つの直営店を運営し、パンケーキミックスは全国の主要スーパーや食料雑貨店など約3000店舗で購入できます。

ローカルにこだわる限界

「九州パンケーキ」の仕掛け人となったのは、宮崎県出身の起業家・村岡浩司さんです。レタス巻き発祥の寿司屋「一平寿し」に生まれ、社会に出てからはリサイクルショップを立ち上げたり、タリーズコーヒーで九州初のフランチャイジー(加盟店)になったりと、さまざまなビジネスを展開されてきました。

宮崎県内にタリーズコーヒーの店舗を増やす中、宮崎の経済を揺るがす災厄が立て続けに起こります。2010年には口蹄疫、2011年には鳥インフルエンザと新燃岳噴火が発生し、宮崎の活気は少しずつ衰えていきました。それまで村岡さんは「商店街にかつての賑わいを取り戻そう」とまちづくりに全力を注いでいましたが、この一連の中で宮崎という限られたローカルにこだわることへの限界を感じます。

今後も災厄が起きる可能性はあり、他にも郊外への大型スーパーの新規出店など、周辺環境は目まぐるしく変わっていきます。行政の補助金や助成金を活用したり、観光客を呼び込むイベントを開催したりしても、短期的には見返りがあるかもしれませんが、抜本的な課題解決にはなりません。

そこで村岡さんは九州全体に目を向けます。九州は県単位で区切られがちですが、北海道のように1つの島として見ると、総面積は台湾と同規模であり、世界で37番目に大きい島です。人口は1300万人を超え、日本の玄関口として東アジア諸国と隣接しているという地理的な特徴もあります。

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