個性的!ヴィンテージマンションという世界

東京・目黒の泰山館に行ってみた

「以前からアレグザンダーの理論に感銘を受けていましたが、このプロジェクトに参加して建築家として実際にどう動くべきかを学ぶことができました」(泉さん)

誰もが共通言語で建築に参加できる手法

ではパターン・ランゲージとは、どのような手法なのでしょうか。

中庭の様子(写真:織田孝一)

さらに泰山館を特徴づけたのは中庭でした。シンボルツリーとなったタイサンボクをはじめ、モクレン、ハナミズキなど、植えた木々は100種類以上あります。「緑の効果は絶大だと思います。木は生長して大きくなるほどに建物を引き立ててくれました」(小杉さん)。

例えば中庭を駐車場にすれば、かなりの駐車場代を得られたかもしれません。しかしそれをせず、駐車場は地下に建設し、中庭を広く取りました。「それが豊かな住空間をつくり、結果的に賃料の維持にも役立ちました」(泉さん)。おかげで泰山館の家賃は竣工以来、四半世紀以上が過ぎてもほとんど下がらないまま、今日に至っています。

美しく快適な町や建築には、時代や場所を超えて共通する特徴がいくつもありますが、ほとんどの場合、これは言語化されていません。そこで、アレクザンダーはこれを抽出し、言語で記述し、これをパターンと呼びました。パターンには状況、問題、解決法がセットで書かれています。このパターンを基本要素にして組み合わせて共通言語をつくり、建築や都市の計画を進める手法が、パターン・ランゲージです。

近代建築では、建築家が最初に理想の完成形を描き、そこに向けて建設していくのが一般的なやりかたです。それに対しパターン・ランゲージでは共通言語を用い、住民が参加して建築や町のあるべき姿を探りながら計画を進めます。泰山館のプロジェクトでは、建築家の泉さん、弁護士、不動産仲介会社などからなるチームによる事業方式を取り、多くの知恵を集めました。

こうした手法を小杉勇さんが受け入れたのは、目先の収益に走らず、長期的な展望を持って空間づくりをしようとしていたからでしょう。

「小杉さんは、計画地の斜面のプレハブ小屋を建て、1、2週間に一度、約1年間に渡ってパターン・ランゲージの勉強会を実施するところから始めました」(泉さん)

柱に埋め込まれたモザイクガラスはイタリア製。一つひとつデザインが異なる(写真:織田孝一)
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