日本人拉致問題、「根本解決」への希望と不安 日本政府が主体的に解決に当たるべきだが…

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日中韓3カ国は5月9日午前、都内で2年半ぶりとなる首脳会談を開いた。日本人拉致問題については安倍首相が解決に向け協力を呼びかけ、李首相と文大統領の理解を得た(写真:ロイター)

さる4月17日、安倍晋三首相は米フロリダでトランプ大統領に対し、北朝鮮の金正恩委員長との首脳会談で日本人の拉致問題を提起するよう求め、トランプ氏は「取り上げる」と明言した。また、安倍首相は、5月9日、東京で行われた日中韓首脳会議の際にも文在寅韓国大統領と李克強中国首相に支援と協力を呼び掛け、日本の立場に理解を得た。

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米国に対しては、これまでブッシュ、オバマ両大統領にも協力を要請してきたが、トランプ氏と金氏の会談は米朝初の首脳会談であり、トランプ氏からの働きかけにより拉致問題が解決に向け前進することが期待される。

しかし、状況は容易でない。日本政府も米国、韓国などを通じて伝言形式で「依頼」するだけでなく、自らなすべきことがある。

拉致被害者の人数は?

改めて拉致問題の主要なポイントを経緯とともに確認しておきたい。

1970年代後半から1980年代初めにかけ、北朝鮮は工作員を使って日本人17名を強制的に、あるいはだまして北朝鮮へ連れ去った。拉致した場所は日本が多かったが、一部は被害者が滞在中、あるいは旅行中の欧州であった。

17名というのは日本政府が北朝鮮により拉致された被害者であると認定した人数であるが、北朝鮮政府は、後に、このうち13名については拉致の事実を認めたが、その他の4名については北朝鮮に入境したことを確認できないとの立場である。

これら17名とは別に、日本政府は北朝鮮が拉致したと確認するに至っていないが、「その可能性を排除できない」と考えている失踪者があり、調査・捜査が続けられている。その数は数百名に上る可能性がある。

また、民間団体である「特定失踪者問題調査会外部リンク」が、家族からの「北朝鮮による拉致かもしれない」との届け出をもとに独自に調査している失踪者があり、これらは「特定失踪者」と呼ばれている。日本政府はこれらについても北朝鮮政府に関連情報の提供を求めている。

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