ウェバー社長「日本のM&Aの成功事例になる」 武田トップが語る「7兆円買収」への自信

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巨額買収を進める武田薬品工業のクリストフ・ウェバー社長(撮影:梅谷秀司)
5月8日、武田薬品工業はアイルランドに本社を置く製薬大手シャイアーの買収で基本合意した。買収額は460億ポンド(約6.8兆円)。日本企業では過去最大の買収案件となる。実現すれば、単純合計で売上げ3.3兆円、世界でトップ10に入る日本発メガファーマ(巨大製薬会社)が誕生する。
ただ、巨額買収にはリスクも伴う。今回、シャイアー株に対するプレミアムは、買収報道前の株価対比64.4%に及ぶ。武田は銀行から3.3兆円を調達、統合後の新会社の有利子負債は6兆円強に膨らむ見通しだ。
またこの買収では、現金とは別にシャイアーの株主に武田株を交付する。そのために武田は、現在の発行済み株式数とほぼ等しい株数の新株を発行する。武田の1株の価値は大幅に下がるリスクがあり、株主からの視線は当然厳しくなる。
巨額買収は成功するのか。武田のフランス人トップ、クリストフ・ウェバー社長CEO(最高経営責任者)を直撃した。

こんなチャンスはそうない

――そもそも7兆円もの巨額資金を投じて、なぜシャイアーを買収しなければならないのですか。

確かに買収によって有利子負債は膨らみます。しかし負債の額は(返済原資になる)キャッシュフロー(CF)との比率で判断する必要があります。

皆さんが家を買う時もそうでしょう。銀行は顧客の収入を見てローン(融資金額)を決めます。CFが大きいほど、有利子負債の返済能力も高くなります。格付会社が注目するのも、(現預金を差し引いた)ネット有利子負債と、CFに近い利子・税金・償却前営業利益(EBITDA)の比率です。

シャイアーのEBITDAは7000億円を超えます。そこを買収するのですから、負債の返済能力も当然に高い。(懸念をしている株主や投資家など)外部の人にはこのあたりをもっと説明していく必要があると思っています。

今回の買収を通じて武田の変革を加速させます。武田は、強力でグローバル競争力を持つ企業になれる。こんなチャンスはそうないと思います。

これまで進めてきた戦略は成功しています。武田は良い状況にある。だからこそ今やるのです。シャイアーの株主に武田株を交付するのですから、武田の経営が苦しい状況だったら買収はできません。

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