松屋銀座、GINZA SIX効果薄れても活況のワケ 「ピュア百貨店」と呼ばれる老舗の老獪戦術

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90年以上の歴史を持つ松屋銀座店。直近4月まで10カ月連続で売り上げが前年同月を超えている(撮影:今井康一)

“昔ながら”の老舗百貨店が、好調を維持している。東京・銀座に90年以上も店を構える松屋銀座店(以下、松屋銀座)は、直近4月の売上高が前年同月比11.2%増という高い伸びを示した。気温の高い日が続いたことが影響し、婦人衣料や雑貨の販売が伸びた。免税売上高も、化粧品や時計を中心に堅調に推移した。

松屋銀座は2016年度に訪日客の消費が落ち込み苦戦を強いられたが、昨年4月に大型ラグジュアリーモール「GINZA SIX(ギンザ シックス)」が近隣に開業したことで潮目が変わった。銀座エリアへの観光客が増え、国内外の顧客を取り込むことで、前2017年度の売上高は前年度比5.8%増と回復。今2018年度も同2.3%増を見込む。

百貨店ならではの戦術を駆使

松屋の社員は旗艦店である松屋銀座のことを「ピュア百貨店」と呼ぶ。百貨店が商品企画や品ぞろえを決める「自主編成売り場」を愚直に守っている、という意味だ。

最近のライバルである近隣のギンザ シックスや3月に開業した「東京ミッドタウン日比谷」といったショッピングモールは、ブランドショップなど各テナントと定期賃貸借契約を結ぶ、いわば「場所貸し」に徹した形態を採用している。従来の競合相手である大丸松坂屋百貨店や高島屋などの老舗百貨店も、場所貸しのビジネスを強化している。  

このビジネス形態は施設運営側には安定した収入がある一方、商品企画や品ぞろえはあくまでテナント任せ。館全体の「買い回り性」を意識したテナント間の連携がしにくい、という側面がある。

松屋銀座は売り場面積約3万3000平方メートルと中規模ながらも、自主編成売り場を軸に据えた百貨店ならではの戦術を巧みに駆使して、銀座エリアに集まってくる顧客を取り込んでいる。

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