南北会談が「包括的」にならざるをえない事情 韓国が北朝鮮に対してやれることは少ない

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およそ11年ぶりとなる南北首脳会談では、何が話し合われるのか〈写真左〉文在寅大統領(写真:Luong Thai Linh/Pool via REUTERS)/〈写真右〉金正恩朝鮮労働党委員長(写真:KCNA/via Reuters)

韓国の文在寅大統領と北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長との会談が4月27日、南北境界線上にある板門店の韓国側施設で行われる。この会談で何が話し合われるのか、予想される争点について論考していきたい。

今回の南北首脳会談は3回目

今回行われる会談は、2000年の金大中大統領と金正日総書記、2007年の廬武鉉大統領と金正日総書記との会談に続く3回目の南北首脳会談である。

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南北双方は、ともに統一を最大の課題としている。第1回の会談後発表された南北共同宣言は、「祖国の平和統一を念願する全同胞の崇高な意思により」両首脳が会談したことを冒頭にうたった。そして、同宣言は全5項目のうち2つを南北統一に関する言及に割いた。

今回の会談も統一問題については大いに盛り上がるだろう。前2回と同様の、あるいはそれ以上の内容の合意が達成される可能性もある。

しかし、今回の会談はこれまでとは非常に異なる環境の中で開催される。会談場所が前2回の平壌(北朝鮮の首都)と違って、韓国側であることは今回の会談の特異性を象徴しているようだ。

前2回の会談では、南北双方は、統一問題などについて南北関係を前進させることをうたいつつ、他方で「経済協力」を進める決意を宣言した。具体的には、開城工団地区の建設および関連の鉄道と高速道路の建設、西海平和協力特別地帯の設置、金剛山観光への協力、白頭山観光の実施、白頭山―ソウル間直航路の開設など多数の協力プロジェクトが合意された。

これらの協力は、形式的には「双方が進める」という形になっていたが、実質的には「韓国による北朝鮮への経済協力」であった。彼我の経済力から見て、一方的になったのは当然だったが、「経済協力」は、統一問題は別として、南北首脳会談の最大の成果であった。

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