私たちは「専業主婦前提社会」に苦しんでいる なぜ「専業」も「共働き」もきついのか?

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この息苦しさの正体は何なのだろうか?(写真:プラナ / PIXTA)
女性活躍が叫ばれる日本ですが、女性たちが嬉々として”活躍”しているかというと、どうもそうではなさそうです。ワーキングマザーも専業主婦も、そしてその夫たちも、それぞれに息苦しさを抱えているように見えます。
その理由は、「専業主婦家庭」を前提としたこの社会の仕組みにあるのではないか。そう語るのは、ジャーナリストの中野円佳さん。新聞記者などを経て、現在は夫の海外転勤でシンガポールで暮らす中野さんが、自身の経験も踏まえつつ、この問題について考えていきます。

 

2017年春、夫の転勤でシンガポールに来た。これまで新聞記者などとして長く会社員生活をしてきたが、これを契機にほぼフリーランスとなり、主な仕事はリモートで記事を書くことのみとなった。

日本にいた頃より、家にいる時間ははるかに長くなったが、かといって家事育児を完璧にやり遂げる「スーパー主婦」になったわけではない。家事は現在はかなりの部分を外注。一方、育児にはそれなりに時間を割くようになった。

その理由や経緯、発生した副作用などはまたおいおい書くとして。日本にいた頃は子ども2人を別々の保育園に送り迎えする、息をつく間もない慌ただしい共働き生活をしていた。現在もいろいろ悩みは尽きないものの、その時と比べると、少なくとも時間的な面でははるかにゆとりのある生活を送っている。

まだ家事で消耗してるの?

中野円佳さんの新連載、1回目です

シンガポールに来て、日本人以外の多様な家族と知り合った。多様な家族の生活を知る中、「まだ家事で消耗してるの?」とまでは言わないが、遠く海の向こうから日本の出来事を眺めていて、思うことはいろいろある。

日本で引き続き大流行している「ワンオペ育児」というキーワード、まだまだ低い男性の育休取得率、CMや歌でのほほんと描かれる良妻賢母像への批判と炎上……などなど。「いや、そうなる気持ちは100%わかるんだけど……」と思いつつも、どこか冷めた気持ちで眺めてしまうことがある。

男女の分担や家事育児について、表現の仕方を議論したり、夫婦間の攻防を繰り広げたりしても、家庭内のいっぱいいっぱいの状況はそう変わらない。議論すべきはそこじゃないんじゃないかという感覚を抱いてしまうのだ。

確かに男性の家庭進出ももっと必要だけれど、問題はもう少し別のところにもある。そもそも日本人が求める家事レベルが高すぎること、それを自分たちでやらなきゃ感が強すぎること……などなど。どう考えても日本のママパパたちはいっぱいいっぱいすぎるのだ。

シンガポールに来て、自分が送ってきた日本での両立生活を振り返り、また日本人以外の家族、そして日本人の駐在家族の2種類の家族を見て、感じたこと。それは日本の、主に母親たちが、非常にクオリティの高い家事労働と子どもの教育に傾倒し、疲弊していないかということだ。

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