日本が「インフレになるはずがない」根本理由 アトキンソン氏「ペスト時の欧州に学ぶべき」

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2%のインフレを目指すアベノミクスは、今後訪れる「ペストの流行」並みの人口減少を舐めてるといいます(写真:尾形文繁)
日本でもようやく、「生産性」の大切さが認識され始めてきた。
「生産性向上」についてさまざまな議論が展開されているが、『新・観光立国論』(山本七平賞)で日本の観光政策に多大な影響を与えたデービッド・アトキンソン氏は、その多くが根本的に間違っているという。
34年間の集大成として「日本経済改革の本丸=生産性」に切り込んだ新刊『新・生産性立国論』を上梓したアトキンソン氏に、真の生産性革命に必要な改革を解説してもらう。

経済が異常な日本では普通の理屈が通用しない

『新・生産性立国論』(書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします)

私が生産性向上の必要性の話をすると、同じ内容の反論が必ず上がります。それは、インフレ派の人たちの「量的緩和をすれば、デフレが解消されて物価も上がる。その結果、生産性は自動的に上がる。今、日本がせっかくいいものをつくっても安くしか売れない『高品質・低価格』の状況に陥ってしまっているのは、日銀の政策の失敗の結果だ」というものです。

彼らがよりどころにしているのは、「通貨の供給量が物価を左右するので、通貨の供給量を増やせば、物の供給が一定であるかぎりインフレ率が上がる」という教科書通りの理屈です。

この理屈自体は、間違いではありません。しかし、この理屈が通用するのは、経済が正常な状態のときだけです。経済が「正常な状態」でなければ、この理屈は的外れとなります。

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