JDI、有機ELパネル「子会社化断念」の舞台裏 革新機構が翻弄、結局「アップル依存」は不変

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JOLEDが開発した有機ELパネル。有機ELはバックライトを必要としないので薄くでき、明暗をつけることに長けているため、液晶が苦手とする黒色もはっきりと表現できるなどの長所を持つ(撮影:今井康一)

“日の丸液晶連合”ジャパンディスプレイ(JDI)に、世界唯一の次世代パネル生産技術を育てる力はもはや残っていなかった。経営再建中のJDIは3月末、今年6月までをメドとしていた有機EL(OLED)の開発製造会社、JOLED(ジェイオーレッド)の子会社化を取りやめると発表した。

現在世界の有機EL市場では、韓国のサムスン電子やLGエレクトロニクスが席巻している。両社と同じ「蒸着方式」の製造技術を持つJDIと異なり、JOLEDは、よりコストを抑えられるとされる「印刷方式」の技術を持つ世界唯一のメーカーだ。当初は、JDIがJOLEDを2017年度上期に子会社化する計画だったが、その後1年の延期が発表され、今回ついに破談となった。JDIの関係者は「見える将来において再び子会社化を検討することはなさそうだ」と明かす。

”有機ELシフト”宣言からわずか1年だが…

JDIは2017年8月、東入来信博会長率いる経営陣が掲げた中期経営計画の柱として、JDIとJOLEDの技術の両輪で液晶から有機ELへのグローバルシフトに向けた有機EL事業の強化を宣言。そこからまだ、1年も経っていない。戦略変更の背景には、どのような事情があったのか。

最大の理由は、JDIにJOLEDを子会社化するだけの資金的余力がない点にある。東芝、ソニー、日立のディスプレー部門を統合して2012年に発足したJDIは、筆頭株主の官民ファンド・産業革新機構(INCJ)から資金援助を、最大顧客の米アップルから前受金を得て、スマホ用パネル工場の新設や生産ラインの増設を行ってきた。上場以来の設備投資総額は約5000億円に上り、4期連続で減価償却費を超える水準になっている。

本業で利益を上げていれば問題はなかったが、中国などのディスプレーメーカーの台頭によるシェア低下や、売上高の5割超を依存するアップルからの受注減などのあおりを受け、工場稼働率が低下。直近2017年10~12月の稼働率は「6割以下」(大島隆宣CFO)という惨状だ。

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