定年後に博士号、71歳が突きつめた鉄道政策

高校の日本史教師から新たな道へ

学位記を手に「研究に年齢は関係ない」と話す小谷正典さん(写真:福井新聞/3月、福井県永平寺町の福井県立大永平寺キャンパス)

元高校教員の小谷正典さん(71)=福井県鯖江市=が、福井県立大から経済学博士号の学位を授与された。教員を定年退職後、関心があった近代の鉄道政策に関する研究を深めたいと大学院に入学し、10年かけて修士、博士課程を修めた。大学によると、70代での博士号取得は珍しいという。「研究に年齢は関係ない」。学位記を手に晴れやかな表情を見せた。

県史執筆過程で鉄道敷設への興味が深まる

小谷さんは主に日本史を教え、丸岡高校長を最後に2007年3月退職した。県史編纂(へんさん)執筆委員も務め、明治、大正期の経済や産業を中心に担当。執筆過程で近代国家の確立に大きな役割を果たした鉄道敷設に興味が深まったという。「明治期に西欧から移入した技術の中でも鉄道は規模も資金も大きく、社会を支えるインフラの象徴」。鉄道史研究に本格的に取り組もうと2008年4月に福井県立大大学院経済・経営学研究科に入学した。

400字詰め原稿用紙500枚に及ぶ博士論文のタイトルは「日本における近代的鉄道政策の形成過程」。明治初期、海運の補完的な輸送手段だった鉄道が、全国的な輸送網として敷設計画が確立していく過程を丹念に調べた。「いつ」「どこに」「どのような目的で」敷設が計画されたかという観点から、流通手段としての鉄道の役割に焦点を当てた。

65歳を過ぎたあたりから体力の衰えを感じるようになり「学位取得まで体が持つか不安でいっぱいだった」というが、月曜から金曜までほぼ毎日、大学の演習室に通い続け、関連資料を読み込んだ。「福井県立大では土曜や夜間の講義が用意され、付属図書館の資料も充実しており、社会人が学ぶ環境として大変ありがたかった」と振り返る。

担当教官の原田政美経済学部教授(64)は「研究に対する意志が強く、大変よく勉強されていた。日本の鉄道史研究に新たな論点を実証した」と小谷さんの努力をたたえる。1992年の県立大開学時から教壇に立つ原田教授によると同大で「70歳代の博士号取得は記憶にない」という。

3月23日に学位記を受け取った小谷さんは「10年で研究成果を形にしたいと思っていたので目標が達成できて良かった。原田先生はじめ経済学部の先生方、大学事務局や図書館職員の皆さんのおかげでここまでたどり着くことができた」と顔をほころばせた。

今後、論文について精査を進め、書籍化や専門誌への掲載を目指したいという。「高齢化の進展に伴い、社会基盤としての公共交通、鉄道の重要性は高まっている。都市計画や鉄道政策を検討、立案する上でも、先人の研究や過去の施策に立ち返り、現在の技術やニーズに合わせて新しい構想を描いていくことが大事だと思う」と話している。

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