富裕層の申告漏れ、国税が「本気の情報集め」

エース級職員が富裕層に絞った情報を収集

国税当局が国内外に多額の資産を持つ富裕層への監視を強めている。

富裕層の情報を収集するプロジェクトチーム(PT)を全国の国税局に拡大し、メンバーも増員した。背景には、税金対策に長(た)けた富裕層への課税を怠れば、国民の間に税に対する不公平感が広がりかねないという国税側の危機感がある。

「顧客や我々も把握していない海外口座まで税務調査で示された。国税の本気度を感じた」。富裕層の顧客を数多く抱える東京都内の大手税理士法人の税理士は驚きを隠さない。

昨年秋、港区に住むIT企業の男性社長に対する税務調査に立ち会った時のことだ。事前に社長から国内外の口座の残高や海外の出資企業からの利子・配当の受領額などを詳細に聞き取っており、準備は万全のはずだった。

しかし、東京国税局の調査官は、社長本人も忘れかけていた出資先や口座などを示してきた。結局、社長は数百万円の申告漏れを指摘され、修正申告に応じた。

国税当局が東京、大阪、名古屋の3国税局に富裕層PTを設置したのは2014年7月。富裕層は国内外に多額の資産を持ち、税理士らに相談して高度な税金対策を講じる例が多い。

東京・築地の東京国税局8階にあるPTでは、国際税務にも精通した30~40歳代のエース級職員が、富裕層に絞った情報を収集。家族や関連会社を一つのグループとして管理し、資産や投資活動を分析する。

野村総合研究所の推計によると、日本で金融資産を1億円以上保有する「富裕層」は約121万7000世帯(全体の2・3%)。そのうち5億円以上の「超富裕層」は約7万3000世帯(同0・13%)という。

国税庁は昨年7月以降、PTを全国12の国税局・事務所すべてに拡大し、全国で約50人だったメンバーを約200人に増やした。タックスヘイブン(租税回避地)の実態を明らかにしたパナマ文書が注目されるなど、富裕層による過度な税金対策への国民の視線が厳しさを増しているためだ。

16年度に全国の国税局が富裕層をターゲットにした所得税の税務調査は4188件に上り、申告漏れ総額は約441億円。1件当たりの追徴税額は304万円と全体平均154万円の約2倍に達した。

個別の調査事案は非公表だが、大阪国税局のPTは15年度、大阪市の電子機器大手「キーエンス」創業者の親族に対し、資産管理会社の株式を創業者から受け取った際の贈与税約1500億円の申告漏れを指摘。約300億円を追徴課税したとされる。

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