28歳、暴力夫から逃げた「一児の母」の間一髪 保護施設シェルターに命を救われた

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暴力をふるう夫……。シェルターが自分の命を救ってくれたという(筆者撮影)
今後の人生を「シングルマザー」として生きようと決める女性が後をたたない。厚生労働省の調査では、現在、母子世帯(シングルマザー)は123.8万世帯。2003年ごろよりその数は120万世帯で、多少の前後はあってもほぼ横ばいで推移している。そのうち、79.5%は離婚が原因とされる(※)。また、養育費を「受けたことがない」女性が、母子世帯全体の56.0%もいる実態(※)も明らかになっている。
当然のことながら、シングルマザーは1人で生活費を稼ぎ、家計を支えていかなくてはならない。子どもにご飯を食べさせながら、寂しくないように心にも配慮する。「子どもが体調不良で呼び出されたら早退」などの条件で、仕事が限定されてしまうこともあるだろう。
社会問題にもなっている母子世帯の収入について、厚生労働省の調査では、平均年間就労収入200万円(平均年間収入は243万円)。預貯金額についてはいちばん割合が多いのは「50万円未満」の39.7%とのこと(※厚生労働省 2016年度 全国ひとり親世帯等調査結果より)。
金銭的には豊かとは言い難い状況かもしれない。それでもシングルマザーという道を選択し、懸命に生きる女性たちがいる。前を見据えて力強くほほ笑む姿がある。本連載はそんな彼女らの生きざまのリアルに迫る。

第1回は、夫から逃げるために着のみ着のまま家を出た、高野葵さん(28歳)を取材した。暴力などを受けた被害者が緊急一時的に避難できる施設「シェルター」の生活を経て、現在は小さなアパートの一室を借りている。3歳の一人娘を抱えて自殺まで考えたという彼女の人生を聞いた。

「死ね」と言われ続けて自分の価値を見失った

高野さんとは取材当日、新宿西口の高層階にあるレストランで待ち合わせた。レストランの雰囲気にもよくなじみ、上品で控えめにほほ笑む様子が印象的な女性だ。

シングルマザーとしてのお話を伺う予定だったが、実はまだ離婚は成立していない。2年ほど前に、夫から逃げるために子どもと着のみ着のまま自宅を出て、現在に至る。

「このままではいられないと考えるきっかけとなったのは、子どもに対する話し合いで夫に首を絞められたことですね。その前から『死ね』と言われていて、背中に包丁を突きつけられるなどありました。……でもそのとき『このまま殺されてもいいかもしれない』と思ったんです」(高野さん)

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