月給21万円「裁量労働制」の彼が味わった地獄

賞与が出るという求人票も実質はウソだった

もう一つの事例を挙げよう。今度は、現在急成長していて人気の「ゲーム業界」の事例だ。

急成長中の企業で「平均的な労働条件」に惹かれたが…

入社から研修までに問題はなし

大学院で自然現象再現のプログラムを作っていたCさんがD社を見つけたのは、2014年1月初旬に大学であった集団説明会。3Dの技術が生かされ、テレビ放送にも関わっている、ゲーム開発もしているこの会社でなら自分のやりたいことができると思った。Cさんは説明会が終わってすぐに民間の求人サイトを通じて応募を出した。面接と適性検査を一度ずつ受け、2次面接に臨むと、いきなりそれが最終面接と言われ、面接の後に即採用となった。

求人の段階でみた求人票には

「給料:21万円(裁量労働制)」「賞与あり」

と書かれていた。Cさんは、この会社が東証一部上場企業の子会社であるのに加え、新卒としては平均的といえる労働条件を魅力に思い入社を決断したという。

4月の入社式の次の日には新人研修について説明があり、早速2カ月間の研修が始まった。しかし研修らしいことは1、2回マナー講習があったくらいで、Cさんはいきなり企業向けの3DCG作品の作成をする部署に配属され実際には会社の案件に携わって働いていた。

入社後の契約書で初めて知らされた「手当込み」の現実

Cさんが所属していた3DCG制作の部署には、プログラマ2人とデザイナー1人、進行管理係1人、とリーダーの5人がいた。リーダー以外は全員新人か入社2年に満たない社員であった。作業内容はプログラミングに関することで非常に神経を使う微細な作業であるうえ、平均して月に40~50時間の残業があった。納期前など忙しい時期は朝に出社して連日帰るのが 22時を超えるようになっていた。

休日は基本的に週2日とれていたものの、給与に関しては求人の時点で知らされていた話とずいぶん違っていた。4月の終わりに交付された契約書で初めて知らされたのであるが、

求人票に書いていた21万円には月50時間分の「深夜手当相当額」と
月24時間分の「休日手当相当額」が含み込まれていて、

残業が21万円にそのままプラスされることはなかった。また、先輩の話によると出ると言われていた賞与も出ないことが多いというのだ。

突然聞かされた会社分割

そんななか、6月に急に会社が分割される話を聞かされる。分社の話はCさんが入社する前からあったようだが、Cさんに分社することを知らされたのは分社するほんの数日前であった。Cさんとしては分社前の会社に残りたがったが、話を聞いた当日に同意書を無理矢理書かされ別の会社に移ることとなった。分社した後の新しい契約でも書面上、業務は以前と特に変わってはいなかった。

契約の一方的な変更によって、Cさんは先行きが見えなくなり、体調を崩すようになっていた。6月には適応障害でうつ状態と診断された。

以上、2つの典型的な事例からは、「求人票」と実際の労働条件がまったく違うことがあることがわかる。

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