月給21万円「裁量労働制」の彼が味わった地獄

賞与が出るという求人票も実質はウソだった

Aさんはこの会社が運営するコンビニの「店長候補」として採用されており、他店での研修を経て5月から都内の店舗に配属された。仕事内容はレジや品出し、商品発注などで、従業員はAさんと店長の他は全員がアルバイトだった。店長の上に数店舗を統括するエリアマネージャーがいたが、彼は週に3回程度店舗に応援にくる程度。Aさんの店舗はオフィス街にあり、主婦パートや学生アルバイトがなかなか集まらず、常に人手不足となっていた。

そんななかAさんは長時間労働に苦しめられることになる。求人や内定の段階では1日8時間のシフト制であるはずだったが、実際には毎日8時から22時までの14時間働いていた。人手不足の中シフトの穴を埋めるのは、店長とAさんしかいなかったからだ。休憩は昼と夕方で計1時間あることになっていたが、特に昼は忙しく、昼食を取るのがやっとで1日30分とれたらよいほうだった。休日も週2日とれることはなく、年間休日100日など到底届かないペースであった。

このようにAさんは毎日24時すぎに寝て6時に起きる生活であったため、仕事中に居眠りをしてしまうこともよくあった。週に1日だけある休日は寝ているだけで終わった。計算すると月に100時間以上残業していたが、前述した通り残業代は一切払われなかった。

そのうえ、Aさんは、季節物商品の「自腹購入」も要求された。「自腹購入」とは、個人や店舗の売り上げを少しでもあげるために、自店舗の商品を自分で購入することであり、コンビニを始め多くの業界で広がっている。無理矢理給料から天引きするケースもあれば、売り上げノルマを課され、それに足りない分を「自発的に」買わせるといった場合もある。Aさんの場合は、コンビニで売っていた「母の日ギフト」を1人2件買うように店長から直接言われていた。自分にはそのギフトを買う必要性がないことを言っても「お母さんやおばあちゃんに買えばいいじゃん」と言われ、結局4000円分の入浴剤を買わされた。ちなみにこうした指示は店舗によっては社員にだけでなくアルバイトにもなされていたという。

辞めたいのに辞められない、というお決まりのコースへ

このような労働環境の中で、立ちくらみが増えたり、持病の腰痛が悪化したりしたため、Aさんはまず店長に辞めたいと申し出た。店長は「辞めた方がいい」と理解を示してくれた。しかしその後、社長とエリアマネージャーと三者面談が行われ「そう簡単には辞められない。」「店長候補として採用したのに、なぜ辞めるというのか。」と言われた。結局その場では、3日の休みを取り、シフトの時間も短くしながら様子を見るということになり辞められなかった。Bさんが聞いた話によると、この会社では退職の意思を示した社員に対しては必ず社長と上司の三者面談が設けられ「人が足りないから辞めるな」という説得が行われるという。過去にはその三者面談が3度行われ結局退職まで半年かかった人もいるらしい。最終的にAさんは「心身症」の診断が出て1カ月休職することになった。

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