父親は誰?「AID」で生まれた38歳女性の叫び 自分は「後ろめたい技術」で生まれたのか

✎ 1 ✎ 2 ✎ 3 ✎ 4 ✎ 最新
拡大
縮小
AID(非配偶者間人工授精)で生まれた子どもの気持ちとは(撮影:編集部)

AIDって何?聞いたことがない…という方が多いかもしれません。これは、夫以外の第三者の精子を使った人工授精のこと。男性側に不妊の原因がある夫婦などが子どもを持ちたいとき、この方法を選ぶ場合があります。

さまざまな立場にある子どもから話を聞く本シリーズ。今回登場するのは、そのAID(非配偶者間人工授精)によって生まれた子どもである、石塚幸子さん(38)です。

この連載の過去記事はこちら

AIDは、日本では1948年に初めて、慶応義塾大学病院で実施されました。それから約70年、国内でAIDによって生まれた子どもの数は、推計で1万~2万人といわれていますが、正確な数は国も日本産科婦人科学会も把握できていません。

また石塚さんのように、自分がその技術によって生まれたことを知り、かつそれを公にしている当事者は、ごくわずかです。

AIDで使われる精子は、親族などが提供するケースや、学生ボランティアが提供するケースが昔からあるほか、最近では、海外の精子バンクを利用する例や、国内の個人ボランティアなどから譲り受ける例もあります。

これまで日本でAIDによって生まれた子どもたちは、精子提供者、つまり血縁上の父親がわからないケースが大半です。

AIDは「隠すべきこと」なのか?

子どもが欲しいのに持てない人たちにとって、AIDは救いの技術のひとつです。しかし日本では、「わが子と血がつながっていないことを世間に隠したい」という親の思いが働くためか、AIDは「隠すべきこと」のように扱われてきました。

そのため、いまだにAIDにおける親子関係を明確に定める法律もできていませんし、子どもが自分の遺伝的な父親を知る権利についても、近年までほとんど考慮されてきませんでした。

実際にAIDによって生まれた子どもの立場である石塚さんは、この技術に複雑な思いを抱いています。

自身がAIDで生まれたという事実を知ったときは、これまでの人生が覆されるような衝撃を受けたといいます。

次ページなによりショックだったのは…
関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT