2018年注目のバイオベンチャー3社はここだ 創設ブームから約15年、成果が見えてきた

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左からペプチドリームの窪田規一会長、サンバイオの森敬太社長、シンバイオ製薬の吉田文紀社長(記者撮影)

健康医療分野が国家成長戦略の柱の1つに位置づけられ、産官学の連携が推進されている。だが、実はいま医薬品開発は曲がり角に来ている。過去30年の間に医薬品開発が大きく進み、患者、医療者の治療満足度は大幅に向上、がんでさえ早期発見できれば不治の病ではない。

一方で難治性の病気や患者数の少ない病気が取り残され、1つの開発成功で大きな市場・収益が確保できる時代は終わりつつある。化合物医薬品開発の成功確率はいまや3万分の1にまで低下するが開発費用は数百億円。片や医療費削減のために薬価切り下げが続き、新薬開発のうまみは低下の一途。大手製薬会社でさえ研究開発部門の縮小や創薬ターゲットの絞り込みを余儀なくされている。

そんな中、大学病院など臨床現場からの需要を受けて、アカデミア発を中心とした創薬系バイオベンチャーの存在感が高まっている。上場36社の開発ターゲットは、化合物医薬品から再生医療まで、がん治療薬からアルツハイマー病治療薬まで幅広い。創薬には15年以上の時間がかかるといわれるが、2003~2004年のバイオベンチャー創設ブームからもうじき15年。黒字化が射程圏に入ってきたベンチャーも現れ始めた。

創薬基盤技術を生かしたペプチドリーム

ペプチドリームはバイオベンチャーの中でも特に注目を集める存在だ。東京大学の菅裕明教授が開発した独自技術を使って、低分子より大きくタンパク医薬より小さいサイズの特殊環状ペプチドを創出し、その中から医薬品候補物質を選び出す。

この技術自体もユニークだが、同様に重要なのはビジネスモデルだ。共同研究というお試しを経て最終的には技術ライセンス契約を結び、契約時と目標達成ごとにフィーが入る仕組み。共同研究はアストラゼネカなどグローバル大手製薬や田辺三菱製薬、第一三共など日本大手製薬計18社と実施。そこからBMS、ノバルティス、イーライリリー、ジェネンテック、塩野義製薬の5社が技術ライセンス契約に移行している。まだ薬の完成には至っていないものの、このビジネスモデルですでに年間50億円規模の営業利益を上げている。

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