安倍政権は、財政推計の「粉飾」を始めるのか 茂木大臣が金利の前提を修正すると発言

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財政再建はさまざまな理由をつけて先送りへ(写真:M・O / PIXTA)

2019年10月予定の消費増税で得られる税収の使途を変え、そのうち1.7兆円を借金減額から教育無償化などに回すことを決めた安倍晋三政権。この結果、国と地方の基礎的財政収支(プライマリーバランス)を2020年度に黒字化する目標は頓挫。新たなプライマリーバランス黒字化達成時期とその裏付けとなる具体的計画を、今年6月発表予定の「経済財政運営と改革の基本方針2018」(いわゆる骨太の方針)で示すと表明している。

財政再建策の仕切り直しに向け、重要な年となる2018年。こうした中、早々に安倍政権の基本姿勢をうかがわせる動きがあった。1月5日の閣議後の記者会見で、茂木敏充経済財政・再生相が中長期の経済財政試算において「金利の動向などをより現実的に修正する」と発言したのだ。

これはいったい、何を意味するのか。

長期金利の想定を修正するとどうなるのか

毎年1月と7月の下旬に2度公表される「中長期の経済財政に関する試算」は、政府が財政再建策を練る上で参考とする基礎的資料だ。簡単に言えば、ここで示されるプライマリーバランス赤字や公債等残高(対GDP<国内総生産>比)の予想が大きければ、新たな負担増や歳出削減など、より徹底した財政再建策が求められる。逆に、これらの予想が小さくなれば、財政再建の圧力は弱まり、安倍政権が志向する財政支出拡大がやりやすくなる。

茂木氏の発言は、この試算における長期金利の想定を修正するというもの。具体的にはこれまでの試算では、アベノミクスの成功によって経済成長率や物価上昇率の改善が続き、それに伴って市場で決定される長期金利も上昇していくという前提が立てられていた。

これに対し、茂木氏は、現在、日本銀行が国債の"爆買い"により長期金利を人為的にゼロ%程度に誘導していることを重視、経済が拡大しても長期金利は従来に比べ上がらない想定に置き換えるものと見られる。

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