「小学校の英語教科化」が直面する4つの課題 現場も負担と不安を感じている

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今までの英語活動は教科ではなく、成績もつかなかったが…(写真:Greyscale / PIXTA)

2020年、日本の英語教育に大きな転機が訪れます。この年から、小学3、4年生では外国語活動が、5、6年生では外国語科が始まるのです。日本の公立学校では外国語とはすなわち英語ですから、2020年からは、英語が小学校で教科に「昇格」するわけです。

本題に入る前に、これまでの流れを簡単に振り返っておきましょう。まず、小学校での英語活動は、2002年に総合学習の時間を使って始まり、2011年からは小学5、6年生で英語活動が年間35コマ(時間)必修となりました。現場の先生たちの努力もあり、英語活動の時間は約15年間で小学校に定着しています。

義務教育なのに指導内容や方法が異なっていた

とはいえ、英語活動は教科ではないため、教科書もありませんし、成績もつきませんでした。教科書がないので、何をどのように取り組むかは、現場の学校や先生に任されていました。つまり、義務教育なのに、学校や地域によって学ぶ内容や方法が異なっていたわけです。

先日、東京都八王子市で小学生の子どもを持つ親御さんたち(それぞれ違った小学校に通っている)に、小学校での英語活動について尋ねる機会がありました。すると、「外国語指導助手(ALT)の先生がたまに来ているようです」「歌やゲームを楽しんでいるようでした」「授業参観で英語をみたことがあります」「うちは小学1年生から英語をやっていました」と答えはさまざま。教科書が確定していないせいなのか、どなたも詳しい内容を把握していないようでした。

さて、今回文部科学省が発表した新学習指導要領では、英語は教科になるため、教科書が用意され、通知表にも成績がつくようになります。これまでの活動では、英語に「慣れ親しむ」ことが目標でしたが、教科では「できるようになる(定着する)」ことが目標となってきます。そして小学3、4年生では、これまで小学5、6年生で行われてきた英語活動が必修となります。

これまでの英語活動の成果は、悪くはありません。小学生への調査(文科省2014)をみてみると、小学5、6年生は70%以上の生徒が、英語が「好き/どちらかといえば好き」と答えています。1年生から取り組んでいる学校では、「好き」と答えた生徒の割合は、学年が上がるにつれて低くなっています。とは言え「きらい/どちらかといえばきらい」の割合は、1番高い6年生で10%程度。また英語活動を通して「英語を使えるようになりたい」と答えた6年生の生徒は70%となっています。

ただ、小学校で英語科をスタートするにはいくつかの課題があります。

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