母の殺人と父の自殺幇助に問われた女の述懐

「一緒に死のう」親子3人が入水した絶望の川

自宅近くの利根川付近に戻り、暗くなるまで待って、川へ。直前、父の「ごめんね」という声が聞こえた。車ごと川に入ったが、水深1.1メートル付近で車が前に進まなくなった。足元から水が車内に入ってきた。

被告:「母は『冷たいよ、冷たいよ』と何度か言っていました」

被告は運転席側のドアを開け、母、父の順に外へ引っ張り出した。

被告:「母は『死んじゃうよ、死んじゃうよ』って手足をバタバタさせました。私は『ごめんね、ごめんね』としか言えなかった」

父とはいつの間にか離れてしまった。

被告:「父には突き放された感じがしました。周りが暗くて、探せなかった」

両親の命は失われた

母だけは離すまいと服を強く握った。すると、動きが止まった。自分の口にも水がどんどん入ってきた。苦しい。吐く。楽になる。また、苦しくなる。流されるうちに、右足が浅瀬をとらえた。一人でうずくまり、空を眺めたり、歌を歌ったりして夜を明かした。両親の命は失われた。

被告人質問の終盤、裁判員や裁判長から質問が続いた。

裁判員:「事件の結果についてどうお考えですか」

被告:「父は具合が悪くなる一方で、自分を惨めに感じているだろうなと思っていた。父が死に切れたことはよかったと思っている」「申し訳ないですが、私と母が死んで、今ここ(証言台)にいるのが父だったら、その方が残酷だった。生き残ったのが私でよかったと思います」

裁判長:「重大な行為をした自覚はあるのか」

被告:「生き残ったが故に、この罪に問われていると思います」

6月21日の論告求刑公判。

検察側は「他に取り得る手段があり、犯行を思いとどまる機会もあった。事件の重大性に向き合っていない」と懲役8年を求刑。

一方、弁護側はこう訴えた。「心中のきっかけは経済的な面ではない。生きる支えを失った父の姿を見て、被告は死んだ方が幸せだと思った。母を巻き込んだのは、大事に大事にしていたことの裏返しだ」。執行猶予付きの判決を求めた。

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