「見た目外国人」の日本人親子を苦しめる誤解 日本人は「単一民族」だというのは幻想だ

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チュック・ベッシャーの長男、ノアは両親が日本人にもかかわらず、学校で「ハーフなのか」と聞かれたことがある(写真:チュック・ベッシャー)

1971年のシングルヒット「イマジン」の中でジョン・レノンは、すべての人類がともに平和に暮らすことを想像してみてほしいと言っている。このほど、東京で開催された日本アジア協会の講演で、チュック・ベッシャーも出席者に同じことを想像してみてほしいと言った。

ベッシャーに言わせれば、日本社会は日本人が考えるよりもずっと多様で、多文化的な国だ。想像力をもうすこしだけ働かせれば、日本人は、ほかの人と違う外見、考え方、行動をする人を受け入れられるようになるはずだ、とベッシャーは言う。

両親は無国籍のロシアからの難民

現在、グリーでシニアアドバイザーを務めるベッシャーは、1962年神戸に生まれた。両親は無国籍のロシアからの難民だった。彼は出生時に日本国籍を得たが、外見は西欧人である。外見がアジア系ではないため、彼はしばしば自分が生まれ育った社会から疎外されているように感じる。ベッシャーは、愛する人々からも日本社会に溶け込んでいない、と指摘されることがある。

「日本で生まれ育ったのにしばしば『ガイジン』と言われたことで私は『ニホンジン』――私が属していないといわれるグループ――とは何を意味しているのかを知りたくなった」とベッシャーは話す。「私は歓迎されて日本で暮らしているのに、なぜ自国の人に日本人に属していないと言われるのだろうか」

昨年、ベッシャーは8歳の息子ノアにこう聞かれた。「パパ、ハーフってどういう意味?」。ノアは通っている地元の小学校の2年生の友だちにハーフと呼ばれたのだ。ノアが父親に自分のアイデンティティについて尋ねたのはそれが初めてだった。

ベッシャーもまた、成長過程で自分自身のアイデンティティについて、自国の人のアイデンティティについて深く考え、米コロンビア大学大学院にまで進学して、このテーマについて勉強した。

外見を除けば、ベッシャーはほかの日本人とほぼ変わらない。なぜならすべての日本人はユーラシア大陸から日本にやってきて、もとからいた人々に溶け込み帰化した人だからだ。

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