任天堂スイッチ、大ヒット商品開発の舞台裏 Wii Uのリベンジ、開発者が明かしたこだわり

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ニンテンドースイッチの開発を率いた任天堂の高橋伸也・企画制作本部長(右)と小泉歓晃副本部長(左)に開発秘話をじっくり聞いた(撮影:梅谷秀司)
任天堂の新型ゲーム機「ニンテンドースイッチ」が絶好調だ。2017年3月の発売から半年が経過した9月末時点で、販売台数は763万台を記録。10月には今年度の販売台数を1000万台から1400万台へと上方修正した。現在も品薄状態は続いており、この人気が続けば任天堂の据え置き機で最も売れた「Wii」超えも視野に入る。
しかし、ここまでの道のりは平坦ではなかった。2012年に発売した「Wii U」は累計販売台数1356万台と大コケ。任天堂は2011年度から3年連続で300億円の営業赤字に沈み、任天堂の据え置き機事業そのものの存続が危ぶまれる事態になった。背水の陣で開発されたのが、今回のスイッチだ。
スイッチの開発者たちは何を考え、実現しようとしたのか。開発の中核を担った企画制作本部の高橋伸也本部長と小泉歓晃副本部長に話を聞いた(『週刊東洋経済』11月18日発売号の第2特集「任天堂の復活は本物か」では、スイッチ開発の経緯と今後の展望を掲載している)。

予想外の遊び方が広がった

――3月の発売以降、好調な販売が続いている。

小泉: 本当はもう少し時間をかけてスイッチの魅力を伝えていく予定だったが、スイッチのよさを想像以上に早く理解していただけている。特にユーザー自身が創意工夫をして、私たちが思ってもみなかった遊び方を開拓しているのが印象的だ。

中でも驚いたのは、スイッチを買うための行列に並んでいる3人組の中で、1人がスイッチ本体を持ち、ほかの2人がその画面を見ながらゲームで遊んでいるのを見たときだ。スイッチでは追加のコントローラを買わなくても2人プレーが楽しめる「おすそわけプレー」という遊び方があるが、まさかそれに「持つ係」を加えて3人でゲームをおすそわけするとは考えていなかった(笑)。

――スイッチのコンセプトはどのように決まったのか。

高橋:任天堂はつねに次のハードについて考えている。2012年にWii Uを発売したあとにはもう次世代のコンセプトを議論していた。スイッチの原型となった、①2つの分離式コントローラ「ジョイコン」を使って気軽に2人プレーを楽しめる、②据え置き機でありながら外に持ち運べる、という2つのコンセプトが固まったのは2014年になる少し前だった。

小泉:意識したのはゲーム人口の二極化。ここ数年で「気軽に遊びたい人はスマホゲームを、ゲームをやりこむ人はプレイステーション4やパソコンで遊ぶ」という状況になった。その両方の層に楽しんでもらえるゲームを考えた結果が、スマホと据え置き機のいいところを兼ね備えるという発想だった。

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