バス業界の風雲児、規模拡大の裏に別の狙い 地方バス会社を相次ぎ買収する「みちのりHD」

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栃木県を地盤とする関東自動車のバスガイドたち。親会社のみちのりホールディングスは規模拡大に積極的だ(写真:関東自動車)

東北、関東のバス会社や鉄道会社を次々と買収するみちのりホールディングス(HD)の規模拡大が止まらない。12月1日には茨城県北部を地盤とするバス会社、日立電鉄交通サービスの全株式を親会社である日立製作所から取得する。

みちのりHDはコンサルティング会社・経営共創基盤(IGPI)のグループ会社として2009年に発足した(関連記事「バス会社を次々買収、『みちのり』とは何物か」)。みちのりHDの発足当初は、経営不振のバス会社を買収していたが、近年は経営面で問題はないものの親会社の経営構想から外れた会社を買収するようになってきた。たとえば、2015年に三菱グループから買収した湘南モノレール、2016年に東武鉄道から買収した東野交通がこの例に当てはまる。今回の日立電鉄交通サービスも「経営的には問題ない」(みちのりHD)としている。

「路線バスの旅」を実現

みちのりHDは南東北・北関東エリアでは福島県内で福島交通と会津バス(会津乗合自動車)、栃木県内で関東自動車と東野交通、そして茨城県内では茨城交通をグループ会社として抱えている。茨城の県北エリアはみちのりHDの空白地帯であり、日立電鉄交通サービスを傘下に収めることで、みちのりHDの営業ネットワークがさらに充実することになる。

規模拡大は、今までのバス会社の枠組みを超えた取り組みを可能にする。たとえば、関東自動車、東野交通、茨城交通の3社は共同企画として「高速バスで行く路線バスの旅」を12月からスタートする。東京から栃木県益子町まで茨城交通の高速バス、益子町から東野交通の路線バスで宇都宮に出て、宇都宮では関東自動車の路線バスで宇都宮市内観光を行う。広域でバス網を展開するみちのりHDならではの企画だ。

ただ、みちのりHDが追求しているのは単なる営業ネットワークの拡大ではない。グループ各社が固有に持っているノウハウをグループ内で共有することで全体の経営効率を向上させる、というシナジー創出の試みを積極的に行っている。

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