「赤信号を平気で渡る老人」への大きな誤解 「老人の困った行動」はボケが原因と限らない

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「認知症」や「頑固な性格」と決めつけては、何も始まりません(撮影:今井康一)
人間、年を取ると、周りを困らせる行動をとることが増えます。「約束を完全に忘れてしまっている」「赤信号でも平気で渡る」「高額商品をいきなり買ってしまう」など、その典型です。高齢者がこうなってしまうのは「認知症でボケてきたから」「カタブツで頑固になっているから」と思われる方も多いでしょう。
老人の取扱説明書』の著者である医師の平松類氏は、こういった行動は、ボケや性格によるものというよりも、老化による体の変化に原因があると言います。現在も診療の現場に立ち、延べ10万人以上の高齢者と接してきた平松氏が、その根本的な原因と、どう解決するべきなのか、どう予防するべきかを、医学的な観点を交えて解説します。

老化の原因を知れば、解決策も見えてくる

「老化による体の変化」について丁寧に考えたことはありますか? それを知ることは、非常に重要です。知ってそれに対する対処・対応を間違えなければ、周囲は高齢者が困った行動を起こしてもイライラしなくなりますし、冷静に対処できます。高齢者自身は、思うように体が動かなかったり、周囲と上手にやり取りできなかったりすることに卑屈になることも減ります。

本記事では、この「老化による体の変化」を踏まえて、周囲がすべきこと、高齢者本人がすべきことを、医学的背景に沿ってわかりやすく具体的に示します。理想論ではなく、現実的で手軽にできる方法です。

高齢者は信号が赤になっても、平気でゆっくりと渡る。よく目にする光景の1つです。どうしてそんな行動をとってしまうのでしょうか? こう考える人が多いと思います。「車のほうが止まってくれると、老人が思っているから」「渡り切れるという自信を、老人が持ってしまっているから」。でもそんな高齢者は、非常に少数派。先ほども触れたとおり「老化による体の変化」が原因なのです。

そもそも日本の信号機は赤になるのがとても早く、特におばあちゃんには渡り切れないように作られています。歩行者が1秒に1m歩いた後に赤になる設定になっているのですが、85歳を超えると男性は0.7m、女性は0.6mしか歩けないのです。

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