アメリカの行く末を左右する孤立主義の本質

トランプのそれは建国の理念とは正反対だ

しかし、1917年はアメリカが第一次世界大戦に参戦して、長い間維持し続けた孤立主義をやめたときであり、そういう意味で100年前のこの年は、アメリカと世界が変化するきっかけになった年なのです。

トランプの「ネオ孤立主義」はただのエゴイズム

そして、それから100年、やみくもに「アメリカ・ファースト」を唱えるトランプの大統領就任が「アメリカの総意」と考えるならば、今やアメリカはかつての理想主義に立脚した孤立主義ではなく、アメリカのことだけを考えるただのエゴイズムとしての「ネオ孤立主義」に向かおうとしているかのようです。

もともと日本では、この国家運営の思想としてのアメリカ特有の「孤立主義」に触れるとき、その理解がかなり混乱していました。今日では孤立主義というと、相手をおとしめる単なる政治スローガン用語のように捉えられ、公平な理解を得られていないうらみがあります。

単純に言えば「孤立する」というのは悪いことであり、他との協調や和解を無視した生き方として誹謗の対象になりがちです。しかし、この「孤立主義」をアメリカの歴史の中でよく知っておくことは、大変重要なテーマであり、しっかりと見ておきたいと私は思っているのです。

アメリカの歴史をずっと巻き戻して概観すると、今、起こっていることは、要するにコロンブス以来のアメリカが大きく変わるということです。それは私の学問上の大テーマの一つでもあり、この本の一つの柱にもなる部分です。

世界の最先端の地政学者が書いた『21世紀における地政学と大国』(C. Dale Walton, Geopolitics and the Great Powers in the 21st Century, 2007 本邦未訳)などでもつとに論じられているように、今、世界はおよそ500年ぶりに海洋国家優位の時代から大陸国家優位の時代へと転換し始めました。

『アメリカ帝国衰亡論・序説』(幻冬舎)。書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします

そこでは必然的に多極化の世界が、支配的な、そしてより構造的な世界秩序として定着すると考えられます。なぜなら、端的に言えば世界の海は一つにつながっていますから、海洋国家優位の時代はどうしても「海の覇権」を一つの国が握りがちだったからです。

マルチポラリティ、つまり多極化世界が、次の時代の世界史の主要な構造になることは、何も目前の国際情勢だけでなく、こうした長期的な文明史上の構造転換によっても明らかなのです。

つまり、今やこの世界は、コロンブス以降の海洋国家が世界を支配した時代に別れを告げて、100年前、最後の海洋覇権国として建国以来守ってきた孤立主義を、1917年にかなぐり捨てて覇権国家へ突き進んできたアメリカが、大きくその舵を切らねばならないときに来ているということです。

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