アメリカの行く末を左右する孤立主義の本質

トランプのそれは建国の理念とは正反対だ

しかし、じつはここが問題なのです。果たして、トランプの主張は、建国以来の国是である不介入主義の復活なのでしょうか。結論から言えば、似て非なるものと言わざるを得ないでしょう。

たしかに、アメリカは1917年までは、ヨーロッパの問題には関与しないことを原則にしてきました。アメリカという国は当初、海洋国家として成り立ってきたのですが、19世紀に入ると、西へ西へと広大な国土の開拓をしていく西部開拓の時代を通じ、大陸国家になっていきました。

西部開拓が生んだアメリカの「名誉ある孤立」

このように、海洋国家から大陸国家になった結果、孤立主義とうまく合致していったのです。アメリカは、「海洋国家というのは、必ず覇権主義になる」という地政学上の原則とは縁を切ったのです。

ちなみにこの定説には根拠があって、海はすべてつながっているので、海の支配を目指すとやがては全世界を支配しようとするから、ということです。

このことは、今から200年以上前の日本でも、学者の林子平が、『海国兵談』という本で主張しています。彼は、江戸の日本橋の下を流れる水は、地球の裏側にあるテムズ川につながっていると言いました。

しかし、独立後イギリスと絶縁して、西へ向かって開拓を進めることに集中し、海洋国家ではなくなったアメリカは、ますます「大西洋の向こうにあるイギリスなどのヨーロッパには関与しない」というイデオロギーが強固な国になりました。

ですから、独立宣言や合衆国憲法を読むと、「アメリカ大陸の防衛」ということだけを謳っています。海外に軍事力を派遣したり、海外の国と同盟を結んだり、権謀術数の外交をやったりしてはいけないというのが、アメリカ建国の大国是でした。

このことは、初代大統領のジョージ・ワシントンが、1797年、大統領を2期務めてホワイトハウスを去る日の演説でも言及しています。

そのときにワシントンは、「アメリカは若い理想を掲げた民主主義の共和国である」「アメリカは、われわれが神の加護によって、地上に築いた別天地である」「これを守り抜くことが、一番大切な、われわれの使命だ」という意味のことを言いました。

そして、そのために大事なことは、「外国での戦争とか、外交とか、同盟などには一切関与しないことである」と言い、非介入の原則を守れと強く言い残したのです。

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