25歳で車椅子生活になった人が考えた「家」
ある日、下半身不随になったら…

25歳のときに、病気で突然下半身不随になった建築家の丹羽太一さん。彼は家づくりの専門家として、また障がいを持つ当事者としての知見を、書籍『体験的ライフタイム・ホームズ論 車いすから考える住まいづくり』(彰国社)としてまとめました。ライフタイム・ホームズとは、どんな家なのでしょうか? ご自宅を拝見しながら、丹羽太一さんとパートナーの丹羽菜生さんにお話をうかがいました。
車椅子生活になったら、住める家が見つからなかった!
近ごろはバリアフリーを掲げる一戸建てやマンションも増えてきました。2006年に公共の場所の段差や階段をなくすことなどを定めた「バリアフリー新法」が施行されたことも、影響しているのでしょう。しかし実は当事者の身になってみると「バリアフリー住宅だからといって、車椅子でも住みやすい家であるとは限らない」という問題が、今でもあるといいます。
建築家の丹羽太一さんは、1992年、大学の研究室に所属する25歳のとき、難病の前脊髄動脈症候群になりました。下肢の動きを失い、手の可動域も限られて車椅子使用者に。2年の治療、リハビリ期間を経て研究室に復帰した1994年当時、介護を受けながら暮らす部屋を探すのに、苦労したそうです。
もしも自分が病気や怪我、加齢などで動けなくなったとき、住みやすいのは果たしてどんな家か? 一般に家を持つのは健康で働き盛りのタイミングが多いもの。でも怪我や病気がなくても、歳をとれば身体が不自由になるときはやってきます。その可能性を考えずに住宅購入をしてしまうと、「ローンを払い終わったころには、購入した家に住めない!」という悲劇も起こりかねません。
建築家であり、また車椅子使用者である丹羽さんは、健康なときも、身体が不自由になり、介護が必要になったときも暮らしやすい家を提案しています。
「今あるライフスタイルと、そこからの時間軸で自分の生活を想い描いてみて、それに合わせていける家を考えることが、ライフタイムで家を考えるということだ」と、自著で述べる丹羽さん。「ライフタイム・ホームズ」とはどんな家なのか、私たちが家選びをする際に参考にできる点などを、丹羽さんご夫妻にうかがいました。