25歳で車椅子生活になった人が考えた「家」

ある日、下半身不随になったら…

太一さんは、車椅子生活になった後に同じ研究室で出会った菜生さんと結婚し、ふたりで建築事務所を開設しました。もちろんこの事務所兼自宅もパートナーの菜生さんとの共作。この家はふたりの建築家としての家に対する理念と、夫婦それぞれの暮らしやすさが追求されています。

「家族の立場からいうと、ヘルパーさんの出入りは毎日のことなので、家族もある程度プライバシーが保てないと疲れてしまいます。ですから介護が必要な人との同居の場合、この家のように入り口を複数設けないまでも、ヘルパーさんが出入りしやすく、かつ、部屋までの移動が必要最小限度であるような動線が描けているとよいですね」(丹羽菜生さん。以下、菜生さん)

介護が必要な人がいると、家族は常に気がかりなもの。そんななかでも、お互いのプライベートを尊重し、他者の力をスムーズに借りられるような環境をつくれば、介護される側も家族も息抜きができます。

地下はヘルパーの入らない夫婦のプライベートなスペース。奥が仕事場。上階からの移動はエレベーターを使う(写真撮影/蜂谷智子)

思えば昔の日本の家は、縁側があったり土間があったりと、外部に開かれていました。一方でプライバシーをしっかり守ることに優れている現代の住宅は、密室化し住人が孤立してしまうリスクを含んでいます。多くの人が将来、なんらかの理由で人の手を借りて生きることを考えると、もう少し家をオープンな場にする必要があるのかもしれません。

「ライフタイム・ホームズ」を実現する

丹羽さんは、障がい者の基準のみで家を考えているのではありません。彼が提案する「ライフタイム・ホームズ」は、今あるライフスタイルにフィットしつつ、長い時間軸で変化する生活にも合わせていける家のこと。それは住む人が希望する理想の生活であり、そこに介護が必要になった未来も含むということです。

「人間は変化していきますから、時間を追って家も変化に対応する必要が出てきます。特に家を建てたり買ったりするときには、万が一身体が不自由になったら乗り越えられないようなハードルがないかどうかも、ある程度考えておく必要があるでしょう。生活に介助が必要な場合、玄関と水まわりが一番問題になります。実際にリフォームに関わっている方に聞いても、そこが一番ネックだといいますね。お風呂、トイレは生活の根本に関わるので……」(太一さん)

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