メトロ新体制で「地下鉄一体化」は実現するか 新社長が乗り継ぎ「運賃通算化」に意欲

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東京の地下鉄は東京メトロと都営地下鉄の2事業者に分かれている(写真:barman / PIXTA)

「東京メトロと都営地下鉄を乗り継ぐ際には、一本の通算運賃で利用できないかという点について都に提案している」。東京メトロの山村明義社長は6月29日に開いた就任会見で、東京オリンピック・パラリンピックが開催される2020年を念頭に、両者を乗り継いだ際の運賃通算化に向けて意欲を示した。

時間の正確さや清潔さなどでは世界的にも定評があるものの、2つの運行事業者による路線が混在し、運賃制度の違いなどで「わかりにくい」と指摘される東京の地下鉄。数年前には、東京メトロ半蔵門線と都営地下鉄新宿線のホームを隔てていた、九段下駅の通称「バカの壁」撤去など一体化に向けた議論が盛り上がりを見せたものの、最近はメディアで報じられることも少なくなっていた。

久し振りに浮上した、東京の地下鉄サービス一体化に向けた話題。議論の現状はどうなっているのだろうか。

「2つの地下鉄」が存在する理由

そもそも、東京の地下鉄はなぜ東京メトロと都営地下鉄の2つに分かれているのか。これには地下鉄建設の歴史的な経緯が関係している。

東京メトロの前身は、戦時体制下の1941年に国や東京市(当時)などの出資によって設立された帝都高速度交通営団(営団地下鉄)だ。営団は現在の銀座線を運営していた私鉄2社から路線を引き継ぐとともに、その後の東京の地下鉄建設・運営を一元的に担う予定だった。

だが、戦後になって都心部の交通需要が増す中、路線網の拡充に向けて東京都も地下鉄事業への参入を要望。1956年には運輸大臣(当時)の諮問機関、都市交通審議会が営団以外の事業者による地下鉄建設への参入を認めるよう答申し、1961年に初の都営地下鉄として浅草線が開業した。その後、営団と都はそれぞれ地下鉄の建設を進め、2つの事業者が共存する体制が定着した。

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