ホールディングスの下に中核生保3社が並立
それは1999年に始まった。この年の1月、太陽生命と大同生命が全面的に業務提携することを発表したのだ。そしてそれから5年後の2004年4月、国内生命保険業界として初となる上場保険持株会社「T&Dホールディングス」を設立した。
T&Dホールディングスの喜田哲弘代表取締役社長は、当時のことを、こう振り返る。
「最も大切にしたのは、太陽生命、大同生命がそれぞれ独自性を活かしながら、提携のシナジーを最大限に発揮できる関係を築くことでした。2001年にT&Dフィナンシャル生命が加わり、現在に至るまで、その精神は生き続けています」

現在は、太陽生命、大同生命、T&Dフィナンシャル生命の生命保険3社を中核に、T&Dアセットマネジメント、ペット&ファミリー少額短期保険などでグループを構成している。生保3社が並立する形になっているが、3社がバッティングしてしまうことはないのだろうか。この点について喜田社長は「生命保険3社はそれぞれ特化したマーケットにおいて事業を展開しており、むしろこの体制に当グループの強さがあるのです」と答えた。
確かに、3社が強みのある分野に経営資源を集中する体制ができている。120年以上の歴史を持つ太陽生命は、営業職員が直接家庭を訪問するビジネスモデルを築き上げ、死亡・医療・介護保障を中心とした総合生活保障を提供するとともに、近年では時代の変化を先取りした商品・サービスを家庭に届けている。今年7月に創業115周年を迎える大同生命は中小企業市場にフォーカスし、中小企業関連団体など提携団体の制度商品販売をコアビジネスと位置づけている。中小企業市場における生命保険ビジネスのリーディングカンパニーだ。
T&Dフィナンシャル生命は、金融機関や来店型保険ショップなどの乗合代理店チャネルに特化した戦略会社。給付内容を差別化した一時払いの資産形成型商品や、価格面などで競争力のある平準払いの保障性商品の販売に注力している。
グループ力の結集で総体もパワーアップ
持株会社の組織形態のもと、異なるビジネスモデルの生保3社が、それぞれの特化マーケットで「独自性」「専門性」を最大限発揮。最適なチャネルを通じて最適な商品・サービスを一体的に提供することにより、グループ全体の企業価値向上に貢献していく。そして、グループ力を結集して経営管理態勢の高度化やシナジー創出をはかることで、個社の総和以上のグループ企業価値向上を実現していくというのが、T&D保険グループの描く成長戦略。こうした「独自性」「専門性」そして「グループ力」こそ、T&D保険グループの強さの源泉なのである。
乗合代理店マーケットへの戦略的取組み
T&Dフィナンシャル生命は、2010年、業界で初めて生涯にわたって毎年給付があるタイプの保険を商品化するなど、先進的な商品開発で独自性を発揮している。同社の板坂雅文代表取締役社長は、この商品の特徴について次のように説明する。
「一時払いの終身保険でありながら、毎年給付もあり保障機能もしっかりつけることで、投信にはできない付加価値を盛り込んでいます。受け取るニーズ、遺すニーズの両方に対応し、保険ならではの安心をお客さまに提供しているのです」
代表取締役社長
板坂 雅文
常に良質な商品や
サービスを
先行して展開
なお、同商品では、外貨連動型でありながら顧客には為替手数料が一切かからないタイプも提供している。
「金融機関チャネルと来店型保険ショップチャネルの両輪がうまく回り、一時払いと平準払いの商品もバランスよく販売できており、代理店の開拓・深耕をすすめることで見えてくる新しいニーズにもしっかり対応しています。お客さま本位の業務運営を徹底し、常に良質な商品やサービスを先行して展開していくのが当社の基本。コストを抑え、お客さまにとっていかにリターンの高い商品を提供できるか、今年度は今まで以上に踏み込んでいきます」(板坂社長)
アセットマネジメント事業もさらに注力
独自性、専門性という点では、グループのアセットマネジメント事業を担うT&Dアセットマネジメントも引けを取らない。昨年は大手証券会社と提携し、デンマークの金融機関が発行するカバード債に投資するファンドを設定してヒット商品に育て、機関投資家などからの注目を集めた。
代表取締役社長
藤瀬 宏
ユニークな商品を
素早く開発し
機動的に市場へ投入
「日本ではあまり知られていませんが、住宅ローンのカバード債ではデンマークが世界最大級の市場です。しかもデンマークのカバード債は約200年間、1度もデフォルトを起こしていない安全性の高い債券なのです。先進的で柔軟な商品開発、そしてクイックレスポンスが当社の特徴。ユニークな商品を素早く開発し機動的に市場に投入することで、お客さまのニーズに的確に応える運用会社として業界でも定評がございます」
と、同社の藤瀬宏代表取締役社長は語る。昨年は、英国の運用会社AHLが運用するファンドを投資対象にしたファンド・オブ・ファンズも設定した。
「世界中の株式、債券など100種類以上を対象に、コンピュータプログラムが投資判断するファンドで、証券会社や地方銀行などを通じて幅広く販売しています」(藤瀬社長)
昨年、策定されたT&D保険グループの中期経営計画では、シニアマーケットへの取組み強化を大きな軸に据えて、2018年度末に生命保険会社の企業価値を表すEV(エンベディッド・バリュー)で2.4兆円を目指すなど、安定的・持続的な成長に向けた目標を設定している。
超低金利が続くなど経営環境は決して楽観できないが、グループ各社の「独自性」「専門性」そして「グループ力」を強みとするT&D保険グループは、この目標達成に向けてさらに挑戦と発見を続けていくだろう。
TOP INTERVIEW
次の3年に花を咲かせ、
その次の3年で実をならせるため、
しっかりと種をまく1年に
―国内生命保険市場の現状をどう評価されていますか。
代表取締役社長
喜田 哲弘
人口減少時代に入り、生命保険市場は縮小していくという見方もあります。けれども当グループがフォーカスするマーケットにおいては、シニア層の人口増加、生活保障ニーズの多様化などにより、新たなビジネスチャンスが生まれてくると考えています。一方で低金利環境の継続や標準生命表の改定、FinTechといった技術革新などを背景に経営環境は大きく変化し、競争が一段と激化していきます。昨年策定した3カ年の中期経営計画はそうした環境認識を前提に、新たなビジネスチャンスをとらえていき、収益力の向上や効率化により競争力を強化していく、当グループならではの方策を示したものです。
―その中期経営計画でシニアマーケットへの取組み強化があげられていますが、具体的にはどういう取組みをされるのでしょう。
たとえば太陽生命は、シニア人口の増加などを踏まえた商品開発と対面サービスが一体となった取組み。大同生命は、介護保障や相続・事業承継サービスといった取組みを成長領域として強化しています。また高齢化が進展している社会情勢を背景に、豊かな長寿社会の実現に向けて、健康増進の重要性が高まっています。このような中、お客さまの疾病の予防と健康増進を支援するため、太陽生命は「太陽の元気プロジェクト」を、大同生命は「DAIDO KENCOアクション」を2016年からスタートさせています。
―中期計画策定から1年が経過しましたが、ここまでの手ごたえはいかがですか。
国内生保事業は堅実な成長を見せており、それぞれの特化マーケットを着実に開拓・深耕し、契約業績や利益指標は中計目標達成に向けて順調に推移しています。特に、前中計から重点施策として取り組んできた第三分野・就業不能保障等への拡張(商品ポートフォリオの変革)、シニアマーケットへの取組み強化が奏功し、新契約価値は大きく増加、企業価値(EV)も堅調に伸展しています。これまでに築き上げてきた強固な基盤をベースに着実に成果を獲得していくとともに、次の3年に花を咲かせ、その次の3年で実をならせるために、2年目もしっかりと種をまく1年にするつもりです。
―グループとしての今後の展望についてお教えください。
T&D保険グループは、これからも生命保険事業を通じて社会的課題の解決に貢献していきます。その中で、すべてのステークホルダーの方の満足度の増大を追求し、Try & Discover(挑戦と発見)の実践により、安定的・持続的な企業価値の向上に努めてまいります。