日本人はなぜ「生活保護受給者」に厳しいのか

誤った権利意識は許されないが全てではない

実際、「病気」の存在が明らかである場合は問題にはならないが、精神疾患というのは、それがはっきりしないケースも少なくない。うつ病などにおいて、「精神症状がかなり改善し、就労することが難しくなくなっている」と思われるケースにおいても、「病気が治っていないので、働けない」と主張、生活保護の受給を続けていることもある。このようなケースに対して世間の目は冷たいが、実際のところ、なかなか判断は難しい。

生活保護を続ける要因の一つとして、実際に就労した場合の収入と、生活保護で支給される金額に大きな差がないことがあげられる。平成29年の時点において、40代の単身者の男性を例にとると、生活保護において生活費として支給される額は80160円、これにプラスして、都内23区内では53700円までの家賃の借り入れが可能となる。生活保護では税金などがひかれることはないため、合計133860円が総支給額となる。

一方で、派遣社員として、あるいは正社員としてフル稼働で勤務しても、業種にもよるが、手取りが10~15万円程度のことも珍しくない。そうなると、苦労して働くよりも、生活保護を選ぶという人がいるのも当然である。働くことによる収入の増加が見込めないのなら、モチベーションが低下しても仕方がない。

保護費の支給の仕方についても議論がある。現金ではなく、一部クーポンで渡すべきだという提案もみられる。また家賃の53700円という数字も、見逃せる金額とは言えない。高齢者などの例外は設けてもよいだろうが、長期にわたって都心に居住することについては、制限をかける必要があるかもしれない。

ただ、現在の福祉事務所は、あまりに人手不足である。以前は、生活保護を受給している患者については、必ず福祉事務所のケースワーカーが主治医に面会を求めてきた。ところが最近は、福祉事務所から連絡があるのは、よほど問題のあるケースのみとなっている。つまり、福祉事務所が患者の病状についてろくに把握していない場合がほとんどだということだ。

この章のはじめに述べたように、生活保護はそれ自体がバッシングの対象になっているとともに、行政の方針も繰り返し批判されてきた。多くの人を納得させるシステムを作るには、知恵者を集めてかなりの検討が必要であることは明らかであり、されにそれを維持するためには、相当のコストを覚悟しないといけないことは、皮肉な現実である。

そして、忘れていけないことは、“感情的な不寛容さ”が、この微妙に判断しにくい判断には入りがちだ、ということである。

幻冬舎plusの関連記事
「会社で評価されません」→誰かに評価されるために生きているのではない
山田詠美さんや村上龍さんは本当のことを言ってくれてる感じがした。対談:芦沢央×はるな檸檬
世界的な評価を得る天才シェフにも、失敗ばかりの修業時代はあった。
ライフの人気記事
トピックボードAD
関連記事
  • 大槻奈那先生、金融の修羅をゆく
  • 人生100年時代を生き抜く働き方
  • 最新の週刊東洋経済
  • 離婚親の選択
トレンドライブラリーAD
  • コメント
  • facebook
-

コメント投稿に関する規則(ガイドライン)を遵守し、内容に責任をもってご投稿ください。

ログインしてコメントを書く(400文字以内)
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
トレンドウォッチAD
地盤沈下に抗う<br>国際金融都市・ロンドンの秘策

強気の姿勢を押し出すジョンソン氏が首相に就任し、「合意なきEU離脱」が現実に迫る金融街シティー。逆境下で推進するフィンテック、グリーンファイナンス、人民元ビジネスの戦略を現地ルポ。イングランド銀行副総裁のインタビューも。

  • 新刊
  • ランキング