日本人はなぜ「生活保護受給者」に厳しいのか

誤った権利意識は許されないが全てではない

もっとも、いわゆる貧困ビジネスについては、必要悪であるという擁護論もみられる。ジャーナリストの長田龍亮氏は、自ら貧困ビジネスによる低所得者用居住施設を利用した経験から、次のような指摘をしている(日刊SPA 2017.3.20)。

「貧困ビジネスは悪く言われますが、ある意味で必要悪な側面もあるんです。世の中には金銭感覚がズレていて、お金を持つと、ある分だけ酒やギャンブルに使ってしまう人もいます。僕が最初に入った施設では一度に小遣いを渡すとそのお金を持って飛んでしまう人もいたので、毎日500円が各々に渡されていました。それとは別に月に一度、5000円の小遣いもあった。食費として月に4万円徴収されましたが、これも考え方次第。怠慢な生活を続けている人だと3食4万円は安く感じます」

さらに貧困ビジネスの利用者は、現状に満足しているという記事もある。次に示すのは、元ホームレスの男性の話である(「貧困ビジネスで搾取されても幸せ…生活保護受給者(50代・男)の自称“ホワイトすぎる生活”」日刊SPA 2017.03.08)。

「正直、ホームレス時代と比べたら天国といえる生活。普通にメシは食えるし、個室も布団もある。困ることはほとんどないね。仕事もせずにこの生活が送れるなんて、奇跡だとすら思うぐらい」「2週間に1回、近所のゴミ拾いをしてる。その後にバーベキューをやるのが楽しくてね。施設長とか寮の仲間で酒を持ち寄って、ワイワイとやってるんだ。これが楽しくてここで暮らしてると言っても過言じゃないね」

もっとも、貧困ビスネスが関わらない「単独犯」による不正受給のケースもある。筆者が相談を受けたケースでこんなものがある。

受給者の女性は、ある大学病院で難病による「歩行障害」と診断され、それによって長年にわたって生活保護を受給していた。ところが街中で、彼女がスタスタ歩いているところを福祉事務所の職員が目撃したことから、問題が発覚した。歩行障害どころか彼女の病気はまったくの詐病で、健康に何の問題もなかったのである。さらに彼女は一千万円あまりの貯金もしていることが判明したため、生活保護は打ち切りとなり、警察に告訴されるに至った。

「保護なめんな」のジャンパーを着て受給世帯を訪問

平成29年1月に小田原市で明らかとなった「事件」は、福祉行政の担当者が自ら、生活保護者をバッシングしているともとれる異例の内容であった。神奈川新聞は、これは次のように伝えている(平成29年1月18日)。

小田原市の生活保護担当職員が、ローマ字で「保護 なめんな」などとプリントしたそろいのジャンパーを作成、受給世帯の訪問時など勤務中に着用していたことが17日、分かった。市は「職員の連帯感を高揚させるために作成した」と釈明する一方、「不適切な表現」として着用を禁止した。
ジャンパーは黒色で、左胸に「保護 なめんな」とのローマ字や「悪」の字に×印を重ねたエンブレムが、背面には「SHAT」(生活・保護・悪を撲滅する・チーム)の文字と「私たちは正義だ」「不正受給をし 市民を欺くのであれば 私たちはあえて言おう 彼らはカスだと」などを意味する英文が黄色でプリントされている。
市によると、2007年7月、受給者が窓口で職員3人を切りつけるなどした傷害事件が発生。職員の連帯感を高揚させようと当時の係長が中心となってジャンパーを作り、これまでケースワーカーら計64人が自費で購入したという。
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