日本人はなぜ「生活保護受給者」に厳しいのか

誤った権利意識は許されないが全てではない

さらに片山五月議員がテレビの地上波でこのタレントを厳しく批判したことをきっかけとして、事態は動き、吉本興業とタレント本人が釈明会見を開いた。この5月25日の会見で、タレントは、「母親の生活保護が開始となったのはまだ自分が売れない時代だったこと、高収入になった時点で対応しなかったのは自分が未熟であったため」と涙ながらに謝罪した。さらに彼は福祉事務所とやり取りがなかったわけではなく、生活保護が打ち切られない程度の援助はしていたと述べている。

しかしタレントに対するバッシングはやむことがなかった。「開き直っている」「引退しろ」などと厳しい批判が相次いだ。さらに彼に対して後輩の芸人がツイッターで激励のメッセージを送ったところ、これに対しても批判が殺到した。さらに彼の妻の母親も生活保護を受給していることが判明し、非難に拍車がかかった。

このタレントの母親に関する生活保護の問題は、本人の問題にとどまらず、多くの波紋を呼んだ。以前から見られた「生活保護に対するバッシング」がさらに激しくなったが、一方で、生活保護を担当している福祉事務所に「自分も生活保護を受給できるのではないか」という問合せが殺到する事態となった。その後、タレントはかなりの額を福祉事務所に返金したことが報道されている。

「貧困ビジネス」が不正受給を違法に後押しすることも

このような報道の流れの中で、一般の人々は、以前にも増して生活保護というシステムそのものに疑問を持つようになってきている。

生活保護は本当に援助が必要な人が受けとっているのか? このタレントのケースのように、本来は家族が援助するべきであるケースも多いのではないか? 行政における生活保護の審査は、適切に行なわれているのか? さらに、いわゆる“貧困ビジネス”の介入が、事態を複雑にしている。貧困ビジネスで利益を得る人たちは、生活保護の受給希望者に福祉事務所との交渉の方法を指南し、時には違法な手段を指示することもある。

次は、私が区役所の生活保護の担当者から聞いた話である。

ある時、中年の男性が生活保護の申請に来た。その時、友人と称する別の男性が付き添っていた。本人は下を向いたまま、区役所の職員が何を問いかけても、まったく話をしようとしない。「友人」は本人の状態について、「この男はうつ病で、状態がどんどん悪くなっている。食事も食べないし、口もきけない状態だ。もちろん、まったく仕事ができる状態ではない」と生活保護の必要性を強調した。

ところが二人の態度に不審に思ったベテランの職員が、心当たりを調べてみたところ、別の区役所にもこの二人は訪問していた。そこでは二人の役割が入れ替わり、「友人」が患者となり、元の患者が今度は「友人」役を演じて、同じような説明を繰り返していたのだった。後にこの二人組は、ある貧困ビジネスから指南を受けていたことが判明した。

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