日本人はなぜ「生活保護受給者」に厳しいのか

誤った権利意識は許されないが全てではない

一方、詐欺罪に相当すると考えられる生活保護の不正受給は少なからず存在しているが、その実際の数はあまり明確にはなっていない(総数の0.5%程度というデータもあれば、それよりもはるかに多いという指摘もみられている)。

不正受給の一方で、生活保護を受給すべき人が、制度の対象となっていないケースもかなり多い。これは行政の窓口における対応の問題である一方、知的障害などのため、制度そのものの利用の仕方を理解していない例も少なくない。

もう一点、留意しておく必要があるのは、生活保護を受ける側の意識の変化である。これは徐々に生じたものであるが、かつての時代においては、生活保護を含めた公的な援助を受けることについて、「恥である」「潔くない」と受け入れないという人が少なからず存在していた。

ところが今世紀になり、このような姿勢とは対照的に、「もらえるものは何でももらってやろう」という風潮が、若年者を中心に強くなっている。たとえばうつ病などよる病気休職の場合、傷病手当金を支給されることがある。

この制度では、基本給の2/3を最長1年半にわたり受給が可能であるが、元の疾患が改善し仕事ができる状態になっても、自分の「権利」だと主張して休職を継続し、期限ギリギリまで支給を受けるケースが後を断たない。生活保護の不正受給は、こういった“誤った権利意識”が強くなっているという流れの中で考える必要がある

“不適切な生活保護受給”のニュースは、2方向へ波及?

平成24年に女性セブンは、ある人気タレントの母親が生活保護を受給していることについて、次のように伝えた。(女性セブン2012年4月26日号)

レギュラー、準レギュラー合わせて約10本のテレビ、ラジオに出演するだけでなく、役者としてドラマや映画などにも出演する人気お笑いコンビのA。誰もが知ってる売れっ子芸人の母親が生活保護を受給していたことが明らかになった。……だがAは、母親とのエピソードをネタとして番組で話すなど、絶縁している様子は一切うかがえない。それどころか、Aは飲み会の席で親しい後輩や友人にこんなことを語っていたという。
「いま、オカンが生活保護を受けていて、役所から“息子さんが力を貸してくれませんか?”って連絡があるんだけど、そんなん絶対聞いたらアカン! タダでもらえるんなら、もろうとけばいいんや!」

当初、この記事で問題とされたタレントは匿名であったが、間もなく吉本興業に所属するタレント(お笑いコンビ「次長課長」河本準一)であることが判明した。その後、彼は、ネット住民に加えて、何人かの政治家からも厳しい糾弾を受けることとなった。次に示すのは世耕弘成議員のブログである。

高額の収入を得ているお笑いタレントの親族が複数年にわたって生活保護を受けていたことが一部週刊誌で報道された件が問題となっている。ネット等でも大きな話題となっている。もしこれが事実であるとすると、自民党の生活保護PTの座長として看過できない問題である。
生活保護認定に当たっては、まずは三親等以内の親族による扶養が可能かどうかの確認が行われる。生活保護給付が始まった後も、被保護者の親族に対しては毎年扶養の可否の確認が行われる。このタレントは少なくとも近年は高額の年収を得ていることは間違いないわけであり、なぜ親族が生活保護を受けることになっていたのか。苦しい家計の中から家族を扶養している人からすると、まったく納得のいかない話である。
……本人からの説明がない状況が続く場合には、自民党のPTとして国会で質問したり、内閣への質問主意書という形で調査を進めなくてはならないことになる。
次ページ「生活保護に対するバッシング」がさらに激しくなった
ライフの人気記事
トピックボードAD
関連記事
  • 「若き老害」常見陽平が行く サラリーマン今さら解体新書
  • 競馬好きエコノミストの市場深読み劇場
  • 育休世代 vs.専業主婦前提社会
  • 晩婚さんいらっしゃい!
トレンドライブラリーAD
  • コメント
  • facebook
-

コメント投稿に関する規則(ガイドライン)を遵守し、内容に責任をもってご投稿ください。

ログインしてコメントを書く(400文字以内)
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
トレンドウォッチAD
小野薬品vs.本庶京大教授<br>大型新薬めぐり深まる溝

本庶佑教授と小野薬品工業がタッグを組んで生み出したがん免疫治療薬「オプジーボ」。ところが、本庶氏が特許の正当な対価として150億円の支払いを求め、小野薬品工業を提訴する方針を固めた。両者の関係はなぜこじれてしまったのか。

  • 新刊
  • ランキング