社員69人で爆走する「千葉テレビ」の正体 番組もスポンサーも広告も、全部「常識外れ」

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千葉テレビの看板番組のひとつ「白黒アンジャッシュ」。放送12年を超える長寿番組だ(写真:千葉テレビ)

日本テレビ放送網は979億円、TBSテレビは981億円――。

これはキー局(地方の系列局とともに全国ネットを形成する)がかけている年間の番組制作費(2016年度の実績)だ。テレビ広告が伸び悩む中、各局はさまざまなコスト削減策を進めているが、制作費は最も慎重に決められる予算のひとつ。「あればあるほどいいわけではないが、長期的に番組のクオリティや視聴率につながる重要な費用」(民放関係者)なのだ。

これだけの巨費を投じ、数多くのスタッフがコンテンツを制作するテレビ局。そんな中、わずか10億円の制作費と69人の社員で独自路線を突き進む局がある。それが独立ローカル局のひとつ、千葉テレビ放送だ。

設立は1970年。千葉に加えて東京、神奈川、埼玉、茨城の一部で放送している。その実態はとにかく常識破り、規格外、自由奔放。番組の編成や看板番組、本社、さらにはスポンサーまで、キー局とは真逆の存在だ。

「太陽にほえろ!」「おそ松くん」を放送するワケ

番組編成の基本方針は「キー局の裏を行くように、ターゲットを絞り、ニッチな需要を狙って編成する」(石山孝紀編成部長)ことだ。

レンガ調の壁がトレードマークの千葉テレビ本社は千葉駅からバスに乗って十数分。訪問者の受付は警備スタッフが行っている(記者撮影)

5月の番組表はとにかくドラマで埋め尽くされている。午前の韓国ドラマに始まり、13時の昼ドラは木下恵介シリーズの「おやじ太鼓」、14時の時代劇は「鬼平犯科帳」「三匹が斬る!」。ゴールデン帯(19~22時)にも米国、韓国、台湾ドラマに加えて「太陽にほえろ!」を放送中だ。

17時台、18時台のアニメも驚異のラインナップ。「アイシールド21」は2000年代の作品だが、「キテレツ大百科」「幽遊白書」「ルパン三世(PART2)」をそろえた。さらには「おそ松くん」も放送中。近年の「おそ松さん」ブームに乗ろうと、放送を始めたものだった。

なぜここまで昔の作品をそろえるのか。もちろん、制作費を抑える狙いもあるが、背景には純粋な視聴者のニーズがある。千葉テレビの主な視聴者は主婦層と60代、70代の高齢者だ。最新作品よりは、韓国ドラマや懐かしい人気ドラマのニーズが高いという。往年の人気アニメをそろえた理由も、30代以降の子育て世代と子供が一緒に楽しめる作品を選んだからだ。

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