プロ野球でも「根性主義」はもう通用しない

かつて「うさぎ跳び」で鍛えた世代の懐古

しかし、同期をはじめ、歳の近い選手のほぼすべては、「もう二度と戻りたくない」と口を揃えるほどに厳しい学生時代を送ってきました。だから一応僕も、恥ずかしながらど根性世代の末席に加えさせていただきます。

プロに入ってからも、スポーツ界のど根性至上体質は変わりませんでした。なにしろ僕より年上の先輩はみな、さらに厳しいスポ根世代です。プロ入り当時、パ・リーグの先輩たちは見た目もいかつい人ばかり。誰もかれもが高倉健か菅原文太か、という雰囲気で、僕の背筋は緊張のあまり凍るばかりでした。

先輩たちのすごみは、見た目だけではありません。言葉や態度での圧迫は当たり前。技術は教えてもらうものではなく盗むもの、という常識のもとに、「おまえはアホか」「ええかげんにせえ」「やめてまえ」「へたくそめ」「プロをなめんな」……などとののしられつつも、くじけずにひたすら先輩に張りついて、「プロのなんたるか」を学ぶのが日々の課題でした。

たとえば新人時代の僕は、酒をそこまで好まないにもかかわらず、飲みに行く先輩のあとをくっついてまわり、「飲め」と言われて素直に飲んで、バッティングや守備のコツを教えてもらおうと必死でした。先輩も、ストーカーのように食らいついていればいつかはわかってくださるもので、「しゃあないなあ、じゃあ、ちょっと来いや」と席に加えてくださり、ときには飲んでいたスナックやバーのテーブルを全部店の端によけさせて、フロアで自ら身振り手振りで技術指導をしてくださいました。お店の女性たちは、あきれて見ているばかりです。そんな即席野球教室がときには朝方まで続き、最後は一心不乱に野球について語り合ったものでした。

昔の野球選手のイメージというと、とかくお酒がらみの豪快なエピソードが際立ちます。しかし実際のところ、試合を離れても野球からは離れられない選手が多く、先輩たちはオン・オフの区別なく、常に野球を念頭に置いて生きていた気がします。そんな先輩たちと僕ら後輩とのつながりが、密で熱い時代でした。

時代によって変わるのはプロ野球界も同じ

ここまでの話からすれば、自分たちの時代の良さばかりを強調して、「いまどきの若い奴は……」「根性主義を経験していない奴は……」という、ど根性主義礼賛者のように思われるかもしれません。が、僕が言いたいのはそんなことではないのです。

僕らと同年代の運動部員はおそらく、そういった理不尽さを味わった最後の世代でしょう。指導者や先輩に対する答えは「ハイ」しか許されず、どう考えても納得できないことでも従わなければならなかった時代の終焉のあたりです。

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