プロ野球でも「根性主義」はもう通用しない
かつて「うさぎ跳び」で鍛えた世代の懐古

ど根性世代の監督
僕は昭和44年生まれ。スポーツシーンでは「ど根性主義」から「合理主義」へと移行する世代です。それまで一般的な下半身のトレーニング法とされ、マンガ『巨人の星』のワンシーンにも使われていた「うさぎ跳び」が実は膝を痛めやすいと知ったのは、ずっとあとになってからのことでした。
根性をつけるために水は飲まない、というのもありました。とある野球の強豪校ではその昔、水を飲ませないために蛇口が針金で縛りつけられていたといいます。現代では、考えられないことです。そんな無茶なしごきも、「水分補給をしなければ熱中症になる」という科学的かつ当然の理由で消えていきました。
「元気があればなんでもできる!」と言ったのはアントニオ猪木さんです。当時のスポーツ界は、「根性さえあればなんでもできる!」というど根性至上主義の時代で、指導する側も、生徒も、根性がすべてを左右するという意識を強く持っていました。だからこそ僕らと同世代の野球人の多くは、理不尽なしごきに耐え、脱水症状でふらついた試練の日々を乗り越えた、というプライドを持って生きてきたのです。
もっとも僕は、クラブチームに入っていたわけでもなく、小・中学校と、ごく平凡な学校の部活動で野球をやってきました。高校は、甲子園が見える場所にあるのに甲子園に遠いという公立校で、顧問の先生の専門は器械体操。大学に入っても、そこまでおどろおどろしいしごきや根性試しを経験しないままプロ入りしたのです。