「何もない」ゆるりまいさんの家を見に行く

モノが減って、ストレスも減った

「最初は家族だからこそ強く言ってもいいかな、と家に長くいるのは自分だから好き勝手にやっていた時期がありました。でも、自分が捨てたくても家族にとっては大事なものがあるから、無理強いはできない。無理やり捨てると、後々までしこりが残り、反発しか生まれない。話し合い、時間をかけて徐々に理解してもらいました」。決定打は、大震災。「災害は人の価値観を変えますね。大事にしていた物も簡単に壊れて物のはかなさを実感しました」。そして一気に「持たない暮らし」が加速した。

リビング・ダイニング・キッチンなど共用スペースは、極力物が少ない「ガラーン」状態にしたが、各自の部屋では好きなインテリアを楽しむという家族のルールを決めた。ゆるりさんは、自分自身のスペースをきれいにして、家族に「物が少なくても大丈夫」と思わせることに成功した。小物を飾るのが好きな母親も「なんにもない空間」がキレイでラクだと分かると、次第に協力的になっていった。「片づけは伝染しますね。楽しそうに捨てていると、周りも整理したくなるみたい」

震災後、結婚した夫は「君がやりたいようにしていいよ」と協力的なのも幸いだった。その後、子どもが生まれ、子育て生活が確立するにつれて、また物の価値基準が変わったという。子どもの服はあっという間にサイズが変わる。「値段が高い物がいい」「これでそろえなきゃ」という力みがなくなった。もともと「物を100持つより厳選した10の物を持ちたい」のがモットーだったが、「短期間で買い替える消耗品はこだわらず、長く使う物はいいものを選ぶ」と区別するようになった。

子どもがいると部屋は当然散らかるが「子どもには物が少ない生活を強制する気はありません。自分の部屋におさまるなら、好きなものはとっておいてほしい。ただ、出したら自分のスペースに片づけることを習慣にしたいですね。持たない暮らしをしていると、家族の理解こそないがしろにしてはいけないと思うようになりました」としみじみ語る。

捨てて捨てて「なんにもない」暮らしから得たものは?

「なんにもないわが家流の暮らし」を実現し、ずっとあこがれてきた、友人をいつでも呼べる家。すっきり広々とした空間。物が探しやすい便利さが手に入ったゆるりさん。そのほか「なんにもない暮らし」を実現することで得るもの、変化を聞いた。

「まず、掃除がラクになったと同時に掃除が好きになりましたね」。集中して掃除をするのは1日に1時間半位だが、常に片づけているそう。「常に片づけている、といっても、持ってきて使ったらしまう、出したら戻すが癖になっているので苦になりません」

夫の仕事が忙しい時期に、帰宅して「家が片づいていると何も考えなくてすむから楽でいいな」と言われたひと言がうれしかったという。確かに、忙しい時期に家が散らかっているのはストレスになるものだ。ゆるりさん自身も、物が少ないと雑務が気にならず仕事に集中できるという。

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