プロ野球「1軍と2軍」の知られざる関係性

特殊に感じるが一般社会に通じることも多い

現役時代は選手として、チームプレーを意識しつつも、突き詰めれば最後はやっぱり自分中心であり、それを軸に世の中が回っていました。体調管理も、自分がまず万全であることのみが大切でした。

引退後、NHKの解説者として3年を過ごした間も、客観的な見方を心がけていましたが、あくまでも持論が中心でしたし、誰かの意思によって論調が変わることもありませんでした。テレビやラジオの中継や放送も、野球と同じくらいチームワークが大事とはいえ、僕が周囲に気を遣う以上に、スタッフのみなさんが僕に気を遣ってくれました。

ですから、2軍監督としてオリックスに「就職」してはじめて、僕は組織の中での立場や状況を考えつつ、あちらやこちらと物事を調整しながら動く、という経験をしたのです。47歳にして、おそらく社会人の誰もが当たり前にやってきたことを遅ればせながら始めたと言えます。

「監督」が必ずしもすべての権限を持つわけではない

そこで改めて実感したのは、先に述べたように「監督」と名のつく役職が、必ずしもすべての権限を持っているわけではない、という現実でした。

たとえば選手の起用。試合のラインアップを組む場合、その作業を僕の意思のみで行うことはほぼありません。僕はあくまでも「2軍という組織を任されている人々の中のまとめ役」であり、「俺がこうしたいんだからこうや!」などということは起こらず、各コーチの意見を聞き、助言を受けることでようやく試合のオーダーも決まります。プロ野球におけるチームプレーは、実は選手がグラウンドで見せるものだけではなく、監督とコーチ陣、総じては球団と現場の人間の意思疎通においても必要なものなのです。

こうして組み上がっていく「スターティングラインアップ」に一番影響を与えるのが1軍からの指令です。

2軍にも勝敗がかかっています。しかし、1軍からの要請は絶対であり優先すべきことで、たとえば「今日からA選手を1軍に上げてくれ」という要請が来たら、彼の存在が今日の2軍の勝敗に大きく影響を与えるとしても、送り出さなければなりません。A選手の状態が完璧ではなく、もう少し2軍での調整が必要だったとしても同じことです。逆に1軍での出場機会が少ないために「2軍で試合勘をキープさせたい」と、急遽、1軍の選手が入ってくることもあり、それによって、本来出場予定だった2軍選手は、自動的にチャンスを失うことになります。

このように、チーム事情は1軍次第でいかようにも変わっていくし、その中でいかに人材を育て、自分たちも勝つか、という部分が2軍の試合の難しさでもあり、醍醐味でもあるのです。

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