移住者400人!若い人が集まる郊外の秘密

山梨と神奈川の県境の街になぜ?

そうしたイベントの開催や作品の展示以外にも、アートを特別なものでなく「身近な文化」として根付かせるための取り組みも行ってきたという。

「例えば、2005年には芸術を通して学校教育を行う私立校『シュタイナー学園』を誘致しました。小・中・高と12年間の一貫教育で、美術などの科目はもちろん、あらゆる授業に音楽や動き、色彩などの芸術的な要素を含んでいます。全ての子どもが本来もっている芸術への衝動を育む独自のカリキュラムが評判で、わが子をこの学校へ通わせたいと移り住んできた方も少なくありません」

こうしたアートを軸にした街づくりに加え、藤野には全国に先駆けた先進的な取り組みが数多い。

「まず、1996年に始まったのが『パーマカルチャー運動』。パーマネント(永久的な)とアグリカルチャー(農業)を組み合わせた造語です。農業を軸に、生活や文化を持続可能なものにしようという運動で、自然志向や自給自足といった暮らしを求める若い移住者を呼び込みました。

また、2009年からは『トランジション藤野』という運動もスタートしています。こちらは大量消費されるエネルギーから再生可能なエネルギーにトランジット(移行)していこうという動きです。具体的には、発電システムを組み立てて地域で電力をシェアしたり、森を再生する活動をしています。2つとも海外ではすでにポピュラーな運動でしたが、日本では藤野が先駆け。その後、日本全国に広がっていきました」

移住してきたアーティストたちが開いたギャラリー「ふじのアートヴィレッジ」。ブースごとに作品が展示されている(写真提供/藤野観光協会)

佐藤さんは「かつての日本のように、経済成長すれば全てが解決する時代は限界にきている」と語る。持続可能な社会をつくるには、これまでの価値観や生き方を大きく見直すべき。そんな藤野の理念に共感する若者やアーティストが移り住んできた結果、限界集落の危機に直面していた地域は見事に復興。今では移住者の数がトータルで250世帯、400人を超えているという。

移住者が語る藤野の魅力

移住者の方にも話を聞いてみよう。2016年11月に藤野へやってきた星野諭さん(38歳)。一級建築士、地域コーディネーター、さらには子どもたちに遊びを教える「プレイワーカー(あそび師)」など、その活動は多岐にわたる。

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