「ヒルトン東京ベイ」の不動産信託受益権を取得
加速する資産の成長
「ヒルトン東京ベイ」は東京ディズニーリゾートのオフィシャルホテルの一つ。客室数は809室。 複数の料飲施設や宴会場、婚礼関連施設などがある
その動きは迅速だった。日本ホテルファンド投資法人とジャパン・ホテル・アンド・リゾート投資法人が合併して「ジャパン・ホテル・リート投資法人」(JHR)が発足した昨年4月からちょうど1年。JHRは「ヒルトン東京ベイ」の不動産信託受益権の取得を決定した。
本ホテルの土地・建物に関する賃料受益債権の90%の取得であり、10%は第一生命保険株式会社が引き続き所有する。全国29のホテルを所有するJHRのポートフォリオの中でも最大の「トロフィー・アセット」で、価格は約260億円。総資産約1600億円の15%超を占める大型物件の取得となった。
JHRの資産運用会社、ジャパン・ホテル・リート・アドバイザーズ株式会社の鈴井博之社長は「ホテルにとって、『ヒルトン東京ベイ』が立地する舞浜エリアは、オフィスで言えば、丸の内、大手町に匹敵する超一等地。レジャー客の増加、観光産業の成長を取り込むというJHRの方針に必要不可欠なアセット」と位置付ける。
JHRは昨年9月、大阪市のホテル京阪ユニバーサル・シティと東京・港区のホテルサンルート新橋の2物件を取得したばかり。矢継ぎ早の取得攻勢に、鈴井社長は「成長できる時に、いかにスピード感を持って成長できるか、がカギという認識を社内で共有して取り組んでいます」と語る。
リートは、増資と借入金を組み合わせて資金を調達して成長サイクルを回していく。今回の不動産信託受益権取得のために行った増資でJHRは、総資産有利子負債比率を低減させて財務安定化を進めることができ、投資口あたり利益も引き上げられるというデータを示し、ポートフォリオの収益性、安定性、質の向上に資する適切な価格での物件取得であることを強調。スピード感のある成長戦略の実行とともに、市場からの高評価を獲得し、資金調達を成功させた。
鈴井社長は「昨秋の増資からわずか半年で、再び市場から資金調達できた意義は大きい」と成長戦略の加速に自信を深める。
株価上昇に応えて収益性も高める
運用戦略
成長戦略の着実な実行に加えて、アベノミクスによる金融緩和も追い風となり、JHRの投資口価格(株価)も上昇している(4月18日現在)。「資産運用会社としては、投資家の期待に応え、投資口価格(株価)の上昇とあわせて、分配金(配当)も向上させていくように収益性を高めていきたい。JHRは、そのための三つのエンジンを持っています」と鈴井社長は強調する。
一つは迅速な物件取得で収益性を上げる外部成長。
二つ目は、財務戦略における借り入れコスト低減による収益性改善だ。従来の借り入れコストは平均年2%超だったが、昨年4月の合併以来、徐々に低下してきている。
三つ目は、適正な賃料収入を得る内部成長だ。ホテルの賃料収入から収益を上げるJHRでは、固定賃料契約以外に、一部のホテルと業績連動型の変動賃料契約を導入している。今年に入ってから変動賃料を導入しているホテルの1室あたり平均売り上げが前年比プラスで推移しているといい、変動賃料収入への反映が期待できる。
また、分配金には、合併時の会計上の利益「負ののれん」も活用。日本版ISAで注目が高まることが予想される「配当金額」の維持にも努める。

ホテル資産をフル活用できる
プロ集団の運用
近年のホテル事業は、建物を所有するオーナーがホテル経営会社に建物をリース、経営会社と契約したオペレーター会社が実際に運営を行うという形で、それぞれ高い専門性を持つ三者が分業するケースが多いという。鈴井社長は、病院にたとえて「不動産所有、病院経営は専門家に任せ、医師には医療に専念してもらった方が効率的になるのと同じ」と説明する。
この中で、JHRは不動産オーナーの役割を担い、投資家から預かった資金を効率的に使うため、物件を選定し、取得の交渉をし、資金調達の段取りをする資産運用会社の手腕が問われる。また、固定賃料を適切な水準で維持しつつ、変動賃料の最大化を目指すこと、さらには施設リニューアル・メンテナンスということも重要な役割になる。
「投資用不動産としてのホテル」の魅力を引き出すため、安定性と成長性を両立する変動賃料契約を導入したのも、こだわりの一つだ。さらに、収益追求と同時に、不動産と事業を一体で売買されるケースでのホテル取得にも対応できるように、JHRが、オペレーター会社に直接委託する「運営委託方式」の導入にも着手。新宿駅近くの好立地であるイビス東京新宿で実現した。
また、個人投資家にはなじみの少なかったホテル不動産投資の認知度を向上させようと、所有ホテルの一部を対象に割引料金で利用できる投資主優待制度を設けるなど、さまざまな知恵を絞ってきた。
鈴井社長は「『挑戦と創造を継続して実行する真のプロフェッショナルが、ホテルへの魅力的投資機会を提供します』という資産運用会社の存在価値を全員で共有しています。当資産運用会社のスタッフは、非常勤取締役を除いてスポンサーからの出向者はおらず、私自身を含めて、すべてをリートにかけています」と話す。そんなプロ達の熱い思いとこだわりが、ホテルリートをますます魅力的なものにしていく。
ジャパン・ホテル・リート投資法人(東証:8985)
東京都渋谷区恵比寿4-1-18 恵比寿ネオナート
決算期 12月
資産運用会社
ジャパン・ホテル・リート・アドバイザーズ株式会社
金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第334号
一般社団法人投資信託協会会員
TEL 03-6422-0530
受付時間 午前9時~午後5時 (土日祝および同社指定の休日を除く)
トップインタビュー
資産規模2000億円へ成長とチャレンジを続ける
鈴井 博之
―― 合併から1年。時価総額(今年4月18日現在)は約3倍に増えて1000億円を超えました。
鈴井 時価総額1000億円は合併時の目標でした。一部の機関投資家は投資の基準を時価総額1000億円以上の銘柄としているので、これをクリアすることで流動性が高まり、投資口価格の安定にもつながると期待しています。
―― 「ヒルトン東京ベイ」の不動産信託受益権取得ではどのような反応がありましたか。
鈴井 日本を代表するホテルであり、投資家やメディアから注目されていると感じています。ホテル不動産の認知度を高め、投資用不動産としての市民権を確立していくという観点でも意味のある取得であったと考えていますし、今後も努力を続けなければなりません。
―― 時価総額1000億円の次の目標は何でしょうか。
鈴井 資産ポートフォリオの収益性、安定性、質を追求するという運用の目的に合わせて、資産規模2000億円を2、3年以内に達成することが目標です。日本を代表する地域、魅力のある地域、話題性のある地域でありながら、まだ物件を保有していない京都、軽井沢、北海道等々でも取得を目指したい、と思っています。
―― JHRとして理想とするホテル像を持っていますか。
鈴井 固定賃料であろうと変動賃料であろうと、その源泉はホテルの収益です。ホテルブランド、ホテル従業員、ホテル経営会社、ホテルオペレーター等々多くの関係者の協力のもとホテルの価値は生まれます。私たちは不動産オーナーの立場ですが、こうしたホテルビジネスをしっかり理解し、ホテル側との相互理解、協力関係を築いていくことが多くの関係者の利益に資するものだと考えています。理想のホテルはこういった関係が築けるホテルです。
ホテルビジネスの知識もあり、収益性を高める中長期的な取り組みをホテル経営会社やオペレーターにご提案させていただくこともあります。最近では、IT世界のオープンソース・ムーブメントのように、若手や外部の人からアイデアを募り、それを商品・サービスに作り込んで、販売する動きを推奨しています。
実際に、主婦からメニューを募集するオリエンタルホテル 東京ベイの「ママシェフ大募集」、地元の郷土料理を募集するホテル日航アリビラの「“読谷を味わう“料理レシピコンテスト」などの企画が立ち上がりました。ハード、ソフト両面の洗練度にプラスして、人とのつながりを大事にしたホテルづくりに貢献したいですね。
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