今でこそ英語で仕事をする機会が増えてきましたが、もともと理系だった私にとって英語は苦手な科目のひとつ。帰国子女でもなければ学生時代から英語が得意だったわけでもないんです。
はじめて英語を本気で勉強しようと思ったのは外資系の企業に転職したとき。その会社では英語で行われる会議で何も話せずにいると“透明人間”のように扱われてしまう。そこで週5日、就業時間前に勉強していましたが、思うような英語力は身に付かなかった。いま振り返ってみると、日頃から英語を使う機会が少なかったのが理由だと思います。結局その会社を辞めてからは、再び英語とは無縁の生活を送ることになりました。
Kumi Fujisawa
シンクタンク・ソフィアバンク代表
1996年に日本初の投資信託評価会社を起業したのち、
00年にソフィアバンクの設立に参画。13年より代表。
07年世界経済フォーラム(ダボス会議)ヤング・
グローバル・リーダー2007に選出。近著に
『最高のリーダーは何もしない』(ダイヤモンド社)。
大阪市立大学卒
再び本格的に英語の勉強を始めたのは39歳のとき。ダボス会議を主宰する世界経済フォーラムの「ヤング・グローバル・リーダー」に選出されたことがきっかけです。このような英語力だったから、当然相手が何を言っているのかまったくわからない状態。これはまずいと思い、空き時間に必死になって、BBCの英語ラジオなど、リスニングの勉強をするようになりました。
そんな学習を半年ほど続けていると、徐々に英語が聞こえるようになります。しかし今度は単語の意味がわからずに苦労する機会が増えてくる。そこで次にTOEICの単語帳などを用いて毎日少しずつ新しい単語を覚えるようになりました。こうした学習は現在もすき間時間をみつけては継続して行っています。
英語で情報を取ることで物事が立体的に見える
英語が使えるようになって良かったと思うことはたくさんあります。たとえば日本にいるだけでは触れることのできない情報に直接アクセスできるのも英語ができるメリットのひとつ。私は誰かから又聞きした情報ではなく、自分が触れて五感で感じたことを大切にしようと考えているのですが、実際に現地に出向いてみると思わぬ発見に出くわす機会がよくあります。
たとえば日本ではサウジアラビアの女性は抑圧されているイメージをお持ちの方もいると思います。けれど実際には想像以上に自由に暮らしていて、起業家の女性も非常に多い。物事を両面から見ることで、より立体的に理解できるようになる。これは英語ができなければ実現しなかったことです。
また海外における日本のイメージも、私たちが普段から触れるものとは随分と異なることがわかります。実は業界によってはほとんど相手にされていなかったり、太平洋戦争のイメージをいまだに引きずっていたり。「日本はスゴイ」というイメージが実は独り善がりなものだとわかって、もっと頑張らなくてはと使命感を抱くようにもなりました。
ほかにも英語がわからないときは英語で話す外国人や帰国子女の日本人にただただ圧倒されていたのが、英語ができるようになって実は彼らの話している内容も大したことないとわかったのは収穫でした(笑)。能力では決して劣っているわけではないのに、英語ができないから相手にされないというのは本当にもったいない。それがまた英語を学ぶモチベーションにもつながっています。
私がいま英語を学習している読者の方にアドバイスしたいのは、英語を話すことに恐怖心を抱く必要はないということ。英語で話していると外国人から聞き返されることもあるでしょう。そんなときも自分の発音や文法が間違っていたのかと悩むのではなく、単に聞こえなかっただけだと思うようにする。日本語で「え?」と聞き返されるのと同じ感覚です。あとは英語を間違えたからといって全人格が否定されるわけではないと前向きに考えて、積極的に自分から話しかけていく。その際にお薦めなのは「先手必勝」。相手に難しいことを聞かれる前にこちらから話を進めることで、自分のフィールドで会話ができるように心掛けると、徐々に英語に対する苦手意識もなくなっていくと思います。
私の場合、ダボス会議でも初めは全く英語を話すことができなかったので、まずはどのような集まりでも必ず顔は出していました。リスニングができるようになっていた頃には、ディスカッションがあれば率先して書記役に手を挙げる。「書記なんだから最後のまとめお願い」とか言われて発表したりすると、いつのまにかリーダー的な存在になったりもしました。

日本のリーダーは
英語を使わないことでチャンスを逃している
日本のリーダーを見渡してみると、英語を話さないがためにビジネスのチャンスを逃している方が大勢います。実は彼らは英語ができないわけではない。大学受験でしっかり英語を勉強しているのに、リスニングとスピーキングのトレーニングを行っていないがために、自分は英語が話せないと思い込んでいる。もともとの英語力は私よりも高い人が大半だと思います。英語ができない社長に恥をかかせまいと、部下が英語の必要な場には社長を行かせないという会社もありますよ。本当にそれはもったいない。
ビジネスの現場で最も利益を得ることができるのは、自分たちで世界のルールを決めることができる企業です。そのためには、人脈を作り市場を開拓するという挑戦的な姿勢が欠かせませんが、英語はブロークンで十分。高度な英語が必要になるのは最後の交渉の場面くらいです。そんなときは通訳に頼めばいいのです。日本のリーダーにはもっと積極的に海外へ出向いて、ビジネスチャンスをつかみ取ってもらいたいです。