子なし女性への悪意なきハラスメントの実態

山口智子さんの発言はなぜ共感を呼んだのか

しかし、次の項で詳しく説明するように、ノンママはほかの属性とは違い、自分自身でもノンママであることに後ろめたさや後悔を持っていることが少なくない。そういう状況で「子育てこそがすばらしい」と強調されすぎると、それがハラスメントになることもあるのだ。

山口智子さんの発言はなぜ共感を呼んだのか

『ノンママという生き方~子のない女はダメですか?~』(幻冬舎)。画像をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします

また、これも判断がむずかしいのだが、ノンママであることをうらやんだり評価したりする発言も時と場合によってはハラスメントになりうる。

「こんな悪い時代、子どもを持たないのは正解ですよ」

「えー、40歳? 子どもがいないときれいですね。ウチの妻とは全然違う。子育てに追われて髪もボサボサで」

「子どもがいないと自分のためにお金や時間を使えますよね、うらやましい」

「いいなあ、ヨーロッパ旅行か。私、旅行が大好きだったのに子どもができてから行けてないんです」

もちろん、これにも何の悪意もないのかもしれないが、こう言われて「いいでしょう」「子どもがいなくて本当によかったです」と答えるノンママはほとんどいないだろう。

あるいは、万が一そう答えようものなら、周囲から「この人は子どもを持つことじたいに否定的なのだ」と誤解されかねない。だから、たとえ相手の言葉に傷ついたり不快を感じたりしても、それを表情や言葉には出さずに、「まあ、私も子どもは好きなのですが」「子どもはさぞかわいいでしょうね」などと曖昧な答え方をしなければならないことが多い。

だからこそ、山口智子さんが女性誌『FRaU』(講談社、2016年3月号)で、「血の結びつきを全く信用していない。(中略)私は『子供のいる人生』とは違う人生を歩みたいなと。だからこそ、血の繋がりはなくとも、伴侶という人生のパートナーを強く求めていました」「私はずっと、子供を産んで育てる人生ではない、別の人生を望んでいました。今でも、一片の後悔もないです。(中略)夫としっかり向き合って、二人の関係を築いていく人生は、本当に幸せです」とノンママとして生きてきたのは自分で選んだことであり、後ろめたさも後悔も感じていないことを公言したことに対して、大勢のノンママが「こんなことをはっきり言ってもいいんだ」と驚き、次いで「私も同じ。これでよかったんだ」と自分を肯定された気持ちとなり、さらに「私もこれまで『子どもはまだ?』と何度も言われて職場で肩身の狭い思いをしてきた」などとノンママ・ハラスメントについておずおずと口を開くようになってきたのではないだろうか。

(次回へ続く)

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