資産運用特集

不動産を資産運用にどう活かすか 金融ジャーナリストの鈴木雅光氏に聞く

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超高齢化社会の今、年金制度の不安定さなど、今の現役世代にとって将来は決して楽観視できるものではない。一方、堅実で持続的に資産が形成できる手段として土地活用・賃貸経営といった不動産投資が注目されている。そこで今回は金融ジャーナリストの鈴木雅光氏に、資産分散の一環としての不動産投資の基本的な考え方と、資産形成面でのメリット・デメリットを聞く。

 

金融ジャーナリスト
鈴木雅光

投資対象は、キャピタルゲインを積極的に狙うものと、安定的にインカムゲインを確保するものとに分けることができます。

キャピタルゲインを狙う投資対象の代表的なものとしては、株式とコモディティがあります。株式にも、長期的な配当取りを目指して投資するのに適した銘柄はありますが、それでも配当利回りに比べ、株価の値動きに収益を大きく左右されることを考えれば、たとえ高利回り銘柄であったとしても、キャピタルゲイン狙いの投資対象です。ましてや、一切インカムゲインの発生しないコモディティは、収益をキャピタルゲインのみに依存しています。

不動産投資は流動性に注意

これに対して不動産は、地価の上昇をうまく捉えられれば、十分にキャピタルゲインを狙うことも可能ですが、株式のような高い流動性を持ち合わせていないため、積極的な売買でキャピタルゲインを確保するという投資法には向いていません。

たとえば保有しているマンションが大きく値上がりしたとしましょう。今、売却できればかなりのキャピタルゲインを確保できそうです。

でも、不動産はマンションであったとしても、そう簡単に転売できません。まず買い手を見つけなければなりませんし、実際に売却するには、買い手との間で値段交渉をする必要があります。これらの手続きには時間がかかりますし、値段交渉をする過程で値切られ、収益性が低下してしまう恐れもあります。

もちろん、資産価値が上がれば、それに越したことはありませんが、流動性の低さを考えると、不動産投資は短期の売買には向いていません。あくまでも物件を長期保有することで、安定したインカムゲインを得るという投資法が適していると考えられます。

現物不動産投資と不動産投資信託のどちらを選ぶか

不動産投資のインカムゲインは、預貯金などとは比べ物にならない高収益が魅力です。物件によって利回りは異なりますが、収益不動産で検索をすると、軒並み10%を大きく上回るリターンが期待できます。

物件の管理・保全にかかるコスト、固定資産税などの各種税金、融資を受けて物件を購入した場合はローン金利などもコストとして負担するため、利回りはもう一段下がりますが、マイナス金利の情勢下では、相対的に有利な利回りが期待できます。

ただし、マンションや戸建て、ビルなど現物不動産への投資には相応の資金が必要ですし、空室リスクもあります。さらに、自分で物件を管理しなければなりません。現物不動産投資は、投資というよりも「事業」に近いと考えた方が良いでしょう。

もし、純粋に不動産投資によるリターンのみを追求するならば、現物不動産よりも、不動産投資信託(REIT)を選んだ方が良いでしょう。不動産投資信託は東京証券取引所に上場されているので、株式を売買するのと同様の流動性が確保されています。分配金利回りは現物不動産投資の利回りに比べて落ちますが、上場銘柄の平均で3.5%程度の分配金利回りは確保されています。ちなみに最も高い分配金利回りが5.7%、最も低いもので2.7%です。最低投資金額も銘柄によって幅はありますが、大体6万円から120万円程度ですから、現物不動産のようにローンを組んで投資しなければならないほどの負担はありません。

長期投資のベースに不動産投資

なお、分散投資効果という点で不動産の妙味があるのかどうかという点ですが、過去10年間の相関係数を見ると、国内株式と国内不動産は強い正の相関を持っています。つまり、値動きの方向がほぼ同じなので、分散投資効果は期待できません。

ただ、前述したように安定したインカムゲインが得られますから、安定収益の確保につながります。一方で株式のように値動きの大きな資産に投資している場合、安定したインカムゲインが一種の精神安定剤になります。長期的な資産形成をするためのベースとして、不動産投資の有効性に注目してみる価値はありそうです。

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