2012年12月13日、デロイト トーマツ コンサルティング監修の「グローバル経営戦略2013」『Think!別冊』No.5が発刊された。同社のコンサルタントの知見に加えグローバル化を味方につけて成長に拍車をかける経営者の体験など、今を生き抜くビジネスパーソン必読のコンテンツ満載である。そのエッセンスを順次公開。

Maxim for Tomorrow ―明日への箴言―
楠木教授 画像
楠木 建
一橋大学大学院国際企業戦略研究科 教授
非連続性の経営――グローバル化の本質

企業を取り巻く世界経済の動向は依然不透明なままだ。
このような経営環境の下、日本企業が苦境を脱し、
再び活力を取り戻すためにはどうすればよいのか。
グローバルの概念を根本から問い直し、ビジネスパーソンの意識を刷新する箴言を公開する。
これを読めば、世界が違って見えてくるだろう。
事の本質を押さえずに「グローバル化!」の掛け声に飲み込まれてジタバタするとロクなことにならない。点景に接近しすぎるあまり、全体像が見えなくなってしまう。全体像が見えなければ、有効な手も打てない。
いきなり「英語力」という話になってしまう。この飛躍が曲者だ。手段が目的化してしまう。言葉としての英語そのものの質はあくまでも二次的な問題だ。それなのに、まじめな人々は「英語力」の目標を高すぎるところに設定して、いらぬ苦労をしたり、勝手に不安になったりする。
グローバル化が求めるコミュニケーションスキルは、英語力ではない。文字どおりコミュニケーションそのもののスキルがあればよい。
英語が必ずしも流麗でなくても、英語でのコミュニケーションが上手な人がいるものだ。そういう人は、面白いことに、日本語で話しているときと英語で話しているときとで、受ける印象にまったく違いがない。英語でも日本語でも、同じ自分のスタイルでコミュニケーションをしているということがよくわかる。英語そのもののスキルよりも、コミュニケーションの内容、姿勢、スタイルがものをいう。
企業のなかに多様性を取り込めば、それで何か良いことが次々に起きるかのような安直な議論が横行している。しかし、多様性それ自体からは何も生まれない。多様な人々や活動を1つの目的なり成果に向けてまとめ上げなければ意味がない。要するに、多様性の先にある「統合」に経営の本領がある。経営の優劣は多様性の多寡によってではなく、一義的には統合の質によって左右される。
グローバル化の最大の壁は、経営人材の不足にある。グローバル化の本質は単に言語や法律が違う国に出て行くということではない。経営が直面する「非連続性」にこそグローバル化の本質がある。
商売丸ごとの経営となるとスキルでは歯が立たない。そこで必要になるのはもはや経営の「センス」としか言いようがない。スキルをいくら磨いても経営者にはなれない。
グローバルなスキルを持つ「グローバル人材」がいないからグローバル化が進まないというのは誤解である。未知の状況でゼロから商売丸ごとを動かすセンスを持った「経営人材」がいないからグローバル化が進まないのだ。
グローバル化したかったら、経営者は社内の経営人材の見極めにもっと時間とエネルギーを割くべきだ。
経営センスを直接「育てる」ことはできなくても、センスが「育つ」土壌なり場を整えることはできる。そこに経営の役割がある。
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