日本人の美徳が世界で評価される本当の理由
実現できないと思っていた理想がそこにある

米国13の美徳の教え
日本の美徳がアメリカ人、特にニューヨークの人々に高く評価される理由が、もう1つある。それは、建国時からアメリカに残る以下の13の美徳の教えからの影響だ。
(1) 節度を持て。食べすぎ、飲みすぎに注意。
(2) 寡黙であれ。誰かのためや、自分のためにならないことを話すな。無駄口をたたくな。
(3) 秩序を保て。整理整頓。時間厳守。
(4) 覚悟を持て。やると決めたら必ず実行しろ。
(5) 倹約しろ。誰かのためや、自分のためにならないことに金を使うな。浪費するな。
(6) 勤勉であれ。時間を無駄にするな。常に有益なことに努めろ。不要な行いを排除しろ。
(7) 誠実であれ。人を害する嘘をつくな。私心を捨て、公正に考え、発言しろ。
(8) 正義を貫け。人を傷つけたり、人へ与える恩恵を怠るな。
(9) 偏るな(中庸であれ)。極端を避けろ。怒っても当然と思える時でも感情に任せて怒るな。
(10) 身を清めよ。身体、衣服、住まいの不潔を黙認するな。
(11) 平静を保て。小事や日常的に起こる出来事に騒ぐな。
(12) 貞操を守れ。性交は健康維持や子づくりのためのみとし、性欲に溺れて自他の平安や信用を傷つけるな。
(13) 謙虚であれ。イエス及びソクラテスに見習うべし。
13番目の「イエス及びソクラテスに見習うべし。」の一文を除いて、これは昔から日本に伝わる「武士の教え」だと言われたら、本当にそうだと思ってしまう人がいても、まったく不思議ではない内容だろう。
実は、これはアメリカ独立戦争(1775年)、アメリカ合衆国憲法制定(1787年)の立役者の一人で「建国の父」として今でも尊敬される、ベンジャミン・フランクリンが理想とする人間の生き方や美徳をまとめた、「フランクリンの十三徳」(Benjamin Franklin's 13 Virtues)である。
ベンジャミン・フランクリンは、アメリカの紙幣の最高額である100ドル札の肖像画の人物。つまり、アメリカで、最も偉大な歴史上の人物の一人と言っていいだろう。
日本に伝わる「武士の教え」と見紛う内容だ
そのベンジャミン・フランクリンが、移民の集まりによって作られたアメリカ合衆国の独立期に掲げた理想の人間の生き方や美徳が、日本に伝わる「武士の教え」と見紛うような内容になっている、というのは、実に興味深い。
異なる文化や価値観やライフスタイルを持つ、多様な人種や民族が集まってできているような国では、もし、人々が、自分の権利ばかりを主張し、嘘をついたり、人を騙したりすることも当たり前と考えていては、国家が成り立たない。
そこで、ベンジャミン・フランクリンは、それぞれ文化や価値観などが異なっていても、1つの理想とする人間の生き方や美徳を掲げ、できる限り、みんなでその理想に近づいていこうということで、この「フランクリンの十三徳」を書き残したのかもしれない。
いずれにしても、ここに書かれた人間の生き方や美徳は、当然、アメリカ国内でも認識されているだろう。特に、各界を率いるエリートなどの有識者層では、自分自身が幼少期に受けた教育や、自分の子どもへの教育にこの「フランクリンの十三徳」が反映され、常識になっている可能性もある。