日本で広がる「ドイツ脅威論」への冷静な反論

経済・金融政策において無力なのは明らかだ

長らく「ドイツを見習おう」と連呼していた反動かもしれません(写真:claudiodivizia / PIXTA)

エネルギー政策にせよ歴史問題にせよ、「ドイツを見習おう」という論調がこれまでの定番だった日本。だが昨年、続けざまにドイツに警鐘を鳴らす本が出され、注目を浴びた。エマニュエル・トッド著『「ドイツ帝国」が世界を破滅させる 日本人への警告』(文春新書)と、三好範英著『ドイツリスク 「夢見る政治」が引き起こす混乱』(光文社新書)の2冊である。これで世論が極端なドイツ批判に傾いたわけではないが、メルケル首相率いる“強いドイツ”に対する潜在的な警戒心を触発された人は多かっただろう。

だが、こうしたドイツ批判の高まりを、ドイツ人はどう受け止めているのだろうか。日本への留学経験と勤務経験があり、現在ドイツのルートヴィヒスハーフェン経済大学東アジアセンターの所長を務め、同学で教鞭を執るフランク・レーヴェカンプ氏に寄稿してもらった。

ドイツ人は、ヒステリックな理想主義者か

「幻冬舎plus」(運営:株式会社 幻冬舎)の提供記事です

ドイツを批判する2冊の本が、日本で話題になった。

三好範英『ドイツリスク 「夢見る政治」が引き起こす混乱』では、ドイツの時事的なテーマを取り扱っており、エマニュエル・トッド『「ドイツ帝国」が世界を破滅させる 日本人への警告』では俯瞰的にドイツの政治と歴史を論じている。

どちらも興味深く読んだ。日本でより売れたのはトッドの本のようだが、論じるに値するのは三好の『ドイツリスク』のほうだ。

三好は長年にわたって読売新聞の特派員としてドイツに滞在した経験があり、ドイツ事情に通じているという点は折り紙付きだ。ドイツに向ける鋭い視線と記事はドイツ人読者にとっても「なるほど」と思わせられるところがある。とはいえ、ドイツ人全体を「夢見るドイツ人」、言い換えれば「現実離れした傲慢なドイツ人」というイメージでひとくくりにして語るときに、危うさがあるのも事実である。ある事実を恣意的に選り分けて印象操作している点では特にそれが目立つ。以下ではそれぞれの論点について詳しく見てみよう。

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