5歳の息子の命を奪った母は何を見たのか

いくら後悔しても、笑顔は二度と戻らない

被告人質問。

被告「事件直前の数日間はきつかった。毎晩1錠ずつ飲んでいました」「月末の会社の繁忙期を何とか乗り越えたが、気持ち的にも、体力的にも、つらい時期だった。睡眠を長く取りたかった」

一晩に3錠の睡眠剤の服用は、規定を超える量だった。原被告は犯行当時、アルコールと睡眠剤による急性中毒に陥り、意識障害を起こしていた。精神鑑定は、そう結論づけていた。

「薬とアルコールを一緒に飲まないでください。この事件は、ほぼ間違いなく防げた事件です」

弁護側の求めで精神鑑定を行った精神科医は、法廷で裁判員らに訴えた。

精神科医「被告は、行動にブレーキがかからなかったり、自分の意思から離れた行動を取ったりするなど、異常な状態だったと強く推認される」

弁護人「犯行時の記憶はありますか」

被告「断片的にしかありません」

事件後に警察署で聴取を受けた際、当初は自分が容疑者だとは認識できなかった、とも語った。

「忠志を返せ」って、ずっと自分に言っている

弁護人「自分が加害者だと知ったときは?」

被告「ショックで……。そのときは、とにかく忠志がどうなっているのか、一番気になっていました」

法廷で、忠志君への思いを質問されるたび、涙で声にならなかった。

毎晩、手をつないで寝ていたこと。その手の感触、笑った顔。そして、「おかあと結婚する」と言ってくれていたこと。小学校入学に備えて買った、青いランドセル。

被告「私の太陽でした」

弁護人「1年以上の留置や拘置だったが、何を考えていましたか」

被告「自分と引き換えに、忠志に全部を返してあげたい。そう思いましたし……。忠志に会いたくて、たまらなかったです」

うつむいて鼻をすする。手にしたハンカチを、いっそう強く握りしめた。おえつが漏れる。

被告「私は加害者ですが、忠志の母親でしたので……。本当なら犯人を、誰よりも憎い。忠志を返せって、ずっと自分に言ってます」

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