5歳の息子の命を奪った母は何を見たのか

いくら後悔しても、笑顔は二度と戻らない

昨年(2012年)9月1日。土曜の夜だった。子どもたちが、遊んだおもちゃを片づけない。原被告はしかった。家庭用ゲーム機「ニンテンドーDS」などを取り上げて、ごみ袋に入れた。

「息をするのと、DSやるの、どっちがいい?」

明日は日曜だから、ゆっくりと眠りたい。そう考えていた原被告は、午前0時ごろ、睡眠剤1錠と焼酎の水割りを1杯飲んだ。朝までに二度、目が覚め、そのたびに睡眠剤を重ねて飲んだ。起きたのは、翌2日の午前11時ごろだった。

三男の忠志君は、もう起きていた。「おかあ、DS」。そう口にした忠志君に、怒りと情けなさがこみ上げてきた。「思いが伝わってない」

忠志君は、保育園に通う活発な男の子だった。我を通す性格で、原被告はかわいがりつつも、普段からしつけに悩んでいた。

「やりたいことだけをやって生活することはできない。そのことを伝えたい」と原被告は考えた。

「息をするのと、DSやるの、どっちがいい?」

忠志君にただした。

生きるうえで、息をすることは不可欠。遊ぶことよりも大切なはずだ――。そんな考えが頭をめぐり、こんな問いが口を突いて出たのだという。

だが、忠志君は答えた。

「DSするほうがいい」

原被告は、忠志君の手足をビニールひもで縛ったうえ、目や口に粘着テープを貼った。そして、ごみ袋を、頭からと足から、2枚かぶせて、粘着テープでつなぎあわせた。

「謝れば、すべて取るつもりだった」。しかし、昨夜から服用した計3錠の睡眠剤が効き、再び眠ってしまった。

午後0時15分ごろ、夫が異変に気づいた。忠志君をごみ袋から出したが、意識はない。119番通報。眠っていた原被告は、夫に突き飛ばされて、やっと目を覚ました。

3日後、忠志君は低酸素脳症で死亡した。

なぜ、睡眠剤を飲むようになったのか。

原被告は税理士の資格を持ち、夫が経営する会社で事務を担当していた。

その夫が昨年5月、精神面で調子を崩した。原被告も、仕事や子育てで疲れを感じるようになっていた。寝付きが悪くなり、夫に処方されていた睡眠剤を、勝手に飲み出した。

次ページ忠志君への思いを質問されるたび、涙する被告人
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