65歳の父はなぜ28歳の息子の命を奪ったのか

「妻と娘を守るため、こうするしかなかった」

被告は法廷で、何度か三男との思い出を口にした。

ともにプラモデルが好きで、かつて三男は鉄人28号の模型を自分のために作ってくれた。大学受験のときには一緒に勉強し、合格通知を受け取った三男は「お父さん、ありがとう」と言った。大学の入学式、スーツ姿でさっそうと歩く三男を見て、とてもうれしかった――と。

「友達のような存在でした」

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弁護人「あなたにとって、三男はどのような存在でしたか」

被告「友達のような存在でした」「三男にとっても、私が一番の話し相手だったと思います」

朝になり、被告は家族に事件のことを話さぬまま、警視庁南大沢署に自首した。

家を出る前、「主治医に相談に行かない?」と尋ねた妻に、「行くから。休んでて」とだけ告げたという。

妻「主人は子どもに向き合い、とにかく一生懸命でした」

証人として法廷に立った妻は、涙ながらに語った。

妻「私は三男と心中しようと思ったが、できませんでした。警察などに何回も入院をお願いしても、できなかった。どうすればよかったか、私にはわかりません」

一方で被告は、事件から半年を経て、いまの思いをこう語った。

被告「いまから思えば、三男を家族への暴力行為で訴え、世の中の仕組みのなかで更生の道を歩ませるべきでした。三男の報復が怖くても、三男のことを思えば、そのように考えるべきでした」

東京地裁立川支部は11月21日、被告に懲役3年、執行猶予5年を言い渡した。検察側の求刑は懲役6年だった。

裁判長「被害者の人生を断ったことは正当化されないが、相当やむを得ない部分があったと言わざるを得ない。被告は、被害者の人生の岐路で、父親として懸命に関わってきた」

ただ、こうも続けた。

裁判長「家族を守ろうとしていたあなたが、最終的には家族に最も迷惑をかけることをした。これからは、もっと家族に相談するよう、自分の考えを変えるようにしてください」

被告は直立し、裁判長の言葉を聞いた。

法廷には、妻のすすり泣く声が響いていた。

*追記 検察・被告側とも控訴せず、判決が確定した。

(文:塩入彩)

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